第10話

夜には全ての人々が眠りから醒めるような音がこの街中に鳴り響いた。

そう祭りの始まりだ。今回はどうやらシルバーが関わっているようだ。

あまり期待と言うよりかは、やらかして無いか心配だ。はしゃぎすぎていないことを願う。


どうやら神輿に担がれている。うん。あれどうみても神輿に担がれて上で踊っている。このまま何事もなく終わって欲しい。


「アルト。彼女は誰かな?」


サレーネによる笑顔の尋問が始まった。確かに、腕にエリカがくっついているが。ある部分の柔らかさを感じて役得だ。


「あら。まだ教えていなかったの。アルト君。私の旦那様。」


いつエリカと結婚したんだ。いや、いつの間に彼女になったんだ。


「あら、婚約者の私をさし置いて他に女を作るなんて。」


さらに墓穴を掘っている。墓穴を掘らされていると言った方が正しい。


「あら、貴方が婚約者とは聞いておりませんが。」


「私とアルト君は族長からちゃんとお達しが来ているわよ。」


どうやら本当のようだ。元老院の奴らは僕を手放したく無いようだ。というよりこれは族長が最終的に里に帰ってきてもいいようにという計らいと考えた方がいいと思う。


「ということで子作りしましょう!」


「いえ。私が先だわ!旦那様!」


いや待て!サレーネは分かるが、エリカ君はどういうことだ?


「あら、私は貴方の魔力にとても惚れているわ。私たちヴァンパイアにの習性については知っているわね。」


ヴァンパイアは、濃密な魔力を好む。魔力には個人差がありヴァンパイアでも選り好みがあるのだろう。私たちエルフに通じるものがある。


「それで、僕が当てはまったと。」


「えぇ。とても、今すぐにでも貴方の魔力で酔いたい気ぶんよ。」


どうやら本当らしい。困ったものだ。

ただ、当の2人は僕を襲うことはく確定しているようだ。


祭り自体は問題なく終わりを告げ、僕は朝までこってりと絞られた。


翌日は朝から総出で掃除に追われた。ただ、お酒を呑んだ人が多いのか割と外で寝ている人が多くて家に連れて行くのが時間を掛けてしまい思ったより終わるのが遅くなってしまった。


「というわけで、私はこの街を出ようと思う。」


「唐突だな。でもいきなりどうして?」


「単純に本来の目的を忘れるところだったからです!」


「本来の目的とは?」


私は、本来の目的を話た。世界を巡り見て知り感じ自分を見つけることを。


「この街に少し根を伸ばし過ぎたかな。愛着もあるけどやはり私は自由の民なのだろうか。違う世界を見たくなったよ。エリカやシルバーにはとても感謝しているし、とてもいい経験になったよ。」


私は、次の週に出立することを決めた。引き継ぎがあるからね。と言っても税金や今の事業の進行についてぐらいだ。

皆優秀で正直私がいらないくらいだ。まぁ、なんとかなるだろう。


こうして私はまた放浪者に逆戻り。

悪いことばかりでもない。一期一会の出会いがあるから。私は、とりあえず境界に向かうことにした。


境界にて


「かの者がまた歩みを始めました。」


「そう。では、あれにはどのような方法で解決するのか楽しみだ。」


その女性は自分の寝床へ戻り寝息を立て始めた。


「ダメです。また、母君に怒られますよ。」


「それだけは、避けねば。今日の予定は何かな?」


「はい。本日の予定は昼過ぎから、学園の方で卒業パーティーその後、夕方から議長との会談です。夜は、議長の奥方様と夕食です。」


「あの者は好かぬが、信念と野心は尊重しよう。では、ドレスの準備を。」


これから始まる動乱の時代は意外とすぐそこにある。

少しのきっかけに気づく者と気づいてもそれについて分からない者、後者は時代に取り残されている者、前者はただ運がいいだけの者。

最後に勝利の女神は誰に微笑むのか。

巻き込まれた方はとんでも無いことになる。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る