第8話

これはルナ姉さんに言われたことなのだが、

「あなたは面倒くさい女に捕まるわね。類は友を呼ぶとはこのことなのでしょうね。」


目の前の女性を一眼見れば皆そう思うだろう。

この魔王城だった城に連れて来られてずっと魔法について根掘り葉掘り聞かれた。搾られて残りカスになるほど聞かれた。

彼女に聞かれたのは魔法だけじゃなかった。エルフの生活や、龍族について聞かれた。

知っているようだったから知識の擦り合わせみたいな感じだった。

まさしく、知識の鬼だった。


彼女の書斎は龍皇学園より広くまさしく図書館といえるレベルだった。


「これは…。」


「はい。こちらは、アトラス帝国式魔導書になります。」


彼女は、ここにいる間、エリカが付けてくれたメイドのミーノだ。


「まじか。これは、もうどこにも無い代物だよ。」


アトラス帝国は1000年以上前に滅亡した国だ。しかし、彼の国は魔法を使いそれを生活レベルまで落とし込んだ。その後は、科学を用いて魔法を発展させようとしたが出来なかった。

簡単なことだ。科学がそこまで発展しきれなかったと言うことだ。いや違うな。魔法の危険性を知りながらも、科学の危険性までは気づけなかった。急速な発展は倫理観までは育たなかった。


「こちらは、エリカ様が露店で買ったモノですね。」


「そうなの?」


どうやら、真祖というのはかなり行動的なようだ。

それによってこうして貴重な書籍を手に取ることができる。

感謝するべきなのであろう。


「何か。いい本でもあっとのかな?」


「そうですね。この本は少々興味を惹かれました。」


「これは。」


僕が示した本は、簡単に言うと“民主主義と共和主義“についてだ。


「へぇ。政治について興味があるの?」


「いえ。ただ、なぜアトラス帝国は滅びたのかと。」


「そこで、政治に目を向けたと言うことね。」


そう、なぜ魔法を極め科学に手を出して、更なる栄華を極めんとした国が滅びに向かったのか。


「歴史を見ることでしか、それを評価しえない。しかし、見方を変えることはできる。」


エリカは黙り込んでしまった。


「アルト君。明日は暇かしら?」


何やら思惑があるみたいだ。


「えぇ。大丈夫ですよ。」


「楽しみにしてね。」


嫌な予感はするが彼女の行動を止めることが出来ない。


「アルト様。お気を付けてください。」


ミーノに注意されてはこれは本格的に不味くなってきたな。

エリカが何か行動を起こしてやらかしている出来事を挙げるとしたら、ある国の王子がたまたまその国の学園でエリカを見て自分のものにしようとした。その時、お目当ての知識が得られずにイライラしているところにいきなり知らない男からしつこいアプローチして来られて、その国の王子と分かると否や、王宮に向かい抗議したが、王子は止まらなかったためにその国で暴れたらしい。

これは300年以上も前の話だが。


翌朝、エリカにたたき起こされた。正確に言うと目の前にいた。うん、目の前にいるんだ。

彼女から香る魔力の匂いは独特だ。やはりこう言うところは真祖なんだと感じる。


「おはよう。」


「あぁ。おはよう。」


馬車に乗っているのはいいのだが、まじでどこに行くつもりだ。


「もう少しで、到着するよ。」


到着するのはいい。本当にどこに連れて行かれるんだ。

僕の心の叫びは虚しく響く。


30分ほど経った。馬車と言っても、黄金に輝いているの馬だ。その馬車は、銀色に輝く宮殿の前で停車した。


エリカはズカズカとその宮殿の中に入って行った。


「久しぶりね!」


「そうですね。500年ほどでしょうか。お久しぶりです。エリカさん。」


そこにいたのは、白銀の龍だった。

その白銀の龍は龍皇国の住民なら知っている、守護神で我々の先祖に当たる神に近い存在だ。


「あなたに頼みにきたのよ。彼のことを。」


「彼?とはあなたのことでしょうか?」


「はい。失礼しました。私は、ハイエルフのアルトと申します。我々の偉大なるご先祖様に最大の感謝を申し上げます。」


「あなた。ハイエルフなのね。」


「はい。そうでございます。」


「そう。それで、エリカどういう要件なの?」


「彼に、一つの街を一度任せてみようと思うの。」


何を言っているんだ。一つの街を任せるだと。


「面白いことを言うのね。それで、ここに来たと言うことはあそこかしら。」


「えぇ。パラディン市にしようと思うの。」


そこは、銀龍が直接治める都市でエリカの都市との境界に位置するところだった。


「条件があるわ!」


「何かしら?」


「面白そうだから、私も付いて行くわ!」


「「はぁ?」」


「私のことは、シルバーとでも言いなさい!」


彼女は人化した。その容姿は形容し難い美しさと神秘性があった。


「楽しくなりそうね!」





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