第7話 革命はしたもののどうしてこうなった

拝啓 

ルナ姉さん

僕は、心が折れそうです。

龍族の者にはもとより伝わっていたが、人間種の者はこれまでだったのか。


敬具

 

僕は、ここに臨時講師をして3年が経った。

ここで、魔法理論の革命が起きた。

この3年間で、魔法を根本的に変えてしまった。

今まで、属性魔法と考えられてきたものに、科学的側面をとりえたことにより、魔法は遥か上に昇華された。


在学中に1人私の周りを付け回す人がいた。

ウルだ。

彼女は、暇さえあれば私を付け回し、私から知識を学ぼうとした。

最終的にはルナ姉さんが家に上がらせ、気づいたら居着いていた。

卒業するまでに私の魔法理論の初歩を完全と言っていいほどに理解して次のステップまで入っていた。

彼女には私が今までに立てた理論とその先の可能性を示しておいた。彼女なら彼女なりにこれを拡張できると私の直感が鳴り響いている。


しかし、順風満帆のようにはいかない。


神聖視されてきたものが、科学的、実験的になってしまった。

これを問題視したのが、宗教界だった。

神聖魔法としてきた、治癒魔法系統は、医学という知識を取り入れられて、医療魔法へと昇華してしまい、宗教への信仰が著しく低下した。

政治的なことは知らない。そっちでやっていればいい。


僕は、その宗教の教会へ出禁とされたが。


そんなこんなで、魔法学会へは引っ張りだこ。宗教の信者から狙われているので、護衛が必要とかで魔法協会なる者がひっきりなしに付いてくる。


私は、自由を愛するはずがこんなことになるとは。


「というわけで、ルナ姉さん。僕は、また旅に出ます。」


「そうね。そう言うと思ったわ。しょうがないわ。同じ場所にこれだけいるのも珍しいことだね。」


3年と言う月日は短いが、僕にとっては長く感じる。


「新しい理論でも編み出したら、また来るよ。」


「アルト君は、頑張ったよ。人間種は、正直これほどまでに学習しない種族とは思わなかった。龍族に連なる人種はすぐに受け入れたが。」


「ルナ姉さん。それはもういいんだ。僕は、やはり、干渉しない方がいい。」


「そう言うな。しかし、休息も必要だ。境界に行って見るといい。あそこは、神族が住まう場所だ。あそこなら私たちのような者にとっては住みやすい環境なのではないか?」


「折角のルナ姉さんの勧めだ。行ってみるよ。」


僕は、翌日にはルナ姉さんの家を出た。


「たまには、顔を見せるよ。」


「そうしてくれると、助かるよ。」


僕は、少し寂しく思いながら後にした。


境界と呼ばれるところは、ここから北にあるので北へ向かう馬車に乗った。

次の町へは特に危険は無く通ることが出来た。

これも、冒険者が定期的にこの周辺の魔物を討伐してくれていたからだ。

途中で冒険者として依頼を受けるのも有りだな。


「あなたは、エルフですか?」


「そうですけど、あなたは?」


「私は、魔族の一つ、ヴァンパイアのエリカ。よろしく。」


「僕は、ハイエルフのアルト。よろしく。真祖のエリカさん。」


私は、握手を求めた。


「あら、分かるの?」


「いや、なんと無くだけど。」


ヴァンパイアにはその長たる真祖がいる。ただ自分の領域からは滅多に出ないので会うことはそうそうないのだが、今目の前にいる。


「それで、僕になんのようですか?」


敵意は無いのだが、一体なんのようだ。


「あなたが、アルト君ね。これを書いたのはあなたかしら。」


それは、僕が書いた魔法理論の書物だった。


「そうだけど。それがどうかしたのか?」


「そうなのね!これは素晴らしいわ!時間あるかしら?これについて話したいわ!」


「まぁ。時間はあるけど。」


「そう!なら、いいところがあるわ。付いてきて!」


僕は、彼女に手を引かれ時空間魔術によりどこかに転移させられた。

明らかに目の前にあるのはこれぞと言うほどに見た目が魔王の城ですと言う感じのお城だった。

彼女によると何代か前の魔王の城だったものをもらったらしい。

こうして僕は、彼女の城へと拉致された。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る