第3話 中級者
私は、冒険者を初めて3年が経った。
これまでに、いろいろと経験した。
薬草採取からはじまり、ワーウルフの討伐、大猿の緊急討伐、火山の調査などを行い徐々に徐々に実力を伸ばした。
最初の町から北に移動して今は、カンバラシアという都市を拠点に活動している。
「お疲れさまでした。これで依頼の達成です。これにて、アルト様は、ダイヤモンドランクとなります!おめでとうございます!」
私は、とうとう冒険者のなかでそこそこの実績を積みそこそこの立場になってしまった。
そろそろ、次のことを行うかということも考え始めた。
「そうでした。お手紙が届いております。」
受付嬢から一通の手紙を渡された。
それはルナ姉からの手紙だった。
どうやら弟子を取ったらしく、一度合わせたいらしいので、龍神国の龍皇学園に来て欲しいとのこと。
ちょうど違う都市に移ろうとしていたのでタイミングがいいと感じたので移ることにした。
*
一週間ほど経ったのだが、まだ龍神国の都市、ゼノンに着いていなかった。
予定では着く予定ではいたのだが。
まぁ。途中に温泉があれば誰でも寄り道してしまう。
しかし、この温泉は素晴らしい。
綺麗な景色もさることながら湯加減も熱すぎず冷たすぎず、そして何より魔力が溶け込んでいる。魔力の吸収を全身で感じられるのはエルフにとってはとても幸福なことだ。何はともあれとても気持ちい。こんな時間がいつまでも続くといいのだが。
私は、この温泉街をこれでもかと楽しんだ。温泉まんじゅうというものや温泉卵といった食べ物から、異なる旅館の温泉に入り浸ったたりと、この街を堪能したのだった。
それでも近くの山から見た街の景色は素晴らしかった。人種の生活の営みを見ているのはとても興味深いものであった。
その間にも冒険者としてたくさんの依頼を受けた。
主に、旅館の警備や荷物の整理がほとんどだったが。
しかし、色々な人がいるものだ。
旅館の中で忙しなく動き続ける女将や借金取りの態度がでかい盗賊の頭とその手下達、徘徊している老人のフリをしたライバル店の刺客がいた。
正直、女将は冒険者より敏捷性が高いのではと思ったほどだ。
そうして、さらに1週間経って私は旅館を出ることを決めたのである。
せっかくなので、もう一回温泉に浸かることにした。
一番好みなのはここの温泉だった。それぞれ少しずつ温度や硬度、魔力量が違かった。この温泉は温度は少し温いが魔力量が一番高かった。なので、一番浸かっていて一番安心出来た。
「失礼します!お客様!先程、湯猿の軍勢が山から降りてきたため避難をお願いします!」
どうやら普段は山奥にいる湯猿という魔物が現れたらしい。
温泉を非常に好んでおり、温泉に浸かって満足したらまた帰っていくらしい。
温泉に浸かっていなければ基本的に襲われないらしい。
女将さんからしたら、営業妨害をされて一溜りもないのだが。
そういうことならばやり過ごすしかないか。
私は、湯船に名残惜しさを残し、温泉を後にした。
ただ運がいいのかどうか分からないが、街の方には被害がないようだ。
なので街に繰り出すことにした。
行きつけと言ってもこの街に来て1週間なのだがここのお茶屋さんの温泉まんじゅうは絶品だ。
なんと言っても魔力が篭っている。
なので私はそこで一杯することにした。
私は、その店に着くとまず温泉まんじゅうを注文した。
やはりここの饅頭は素晴らしい。お茶を啜り私は幸せを堪能していた。
しかし、世の中変わった人がいる。所謂、正義感が強い人だ。
大事なことなのだが、邪魔だけはしないで欲しい。
というよりも、私の隣の席で騒いでいるのだ。
どうやら、龍皇学園の生徒らしい。課外活動のようだ。それでこの温泉街に来たようだ。
「行くぞ!俺たちで湯猿を倒すぞ!」
やはり彼らは討伐しに行くようだ。
彼らの装備からして油断が無ければ勝てるだろう。
「あのーすみません。」
エルフの女性が話をかけてきた。
まだ、幼いエルフのようだ。と言っても見た目だけで中身は人間で言うところの100歳を超える年齢であろう。
「あのーもしかしてハイエルフの方ですか?」
精霊が彼女に教えたのだろう。かなり精霊との親和性が高いように見える。
周りの精霊が彼女を助けているので良好な関係を築いているのだろう。
精霊との親和性が高ければ、それだけ高い精霊術が使え、精霊と意思疎通が深くなる。
意思疎通が出来るから高い精霊術が使えると言えるのだけど。
私には嘘をつく必要がないので、正直に答えた。
「ハイエルフには初めてお会いしました。私はアイナと申します。我らエルフの上位者に出会えたことを感謝いたします。」
そういうと彼女は膝を突き頭を下げた。
エルフがハイエルフにとる行為だ。人間で言うところ平民が貴族に対する行為にあたる。
そんな中、グループの中でルールが分からないやつは大体1人はいる。
「エルフが平民に頭を下げるな!品格が下がるぞ!そして、平民!貴様こそ頭を下げよ!」
どうやら、彼は人間の国の王族らしい。アイナが精霊を通して教えてくれた。
そういえば、聞いたことがあるな。
今代の王子は勇者ではあるが無脳であると。
「これは失礼しました。ゲール王子。」
「うむ。それで良い。」
私は、膝をつけて、礼をした。
アイナは今にも失神しそうに震えていた。
「私は、用があるので失礼します。」
私は、足早にお店を出て、荷物を取りに宿に戻った。
宿に戻り女将にお礼を言い宿を出て龍皇学園に向かうことを決めた。
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