決行前日 6/5

 準備は整った。

 あとは、林道の脇沿いにある、神社に呼び出して、復讐を実行するだけだ。


『お前が会いたい、って言ったらOK出したぞ』

『いいね。神社にきて、って言っといて』

『おう』


 リョウマとのやり取りを横から見ていたケンイチは、不安げにため息を吐く。


「本当に上手くいくのか」

「分からないよ」

「くっそぉ。映画みたいに、すげぇ知能犯とかだったら、もっといい方法思いつくのによぉ」


 僕らは、どこまでも陰キャだった。

 異世界物のように、特殊な力さえなければ、最強物の主人公のように頭だってよくない。


 ただの一般人で、日陰者だ。


「一つ言えるのは、確実に泣く」

「だろうな。俺だって、そんなことされたら、鳥肌止まらないよ」


 双子は威圧用と、押さえてもらうのに協力させる。

 僕とケンイチだけでは、情けない事にメンタルと物理で相手に負けてしまう。


 キモいと叫ばれたら、思わず掴んだ手を離してしまう。


「俺たち、……陰からハイレグを見てるだけで、幸せだったのにな」

「まあ、ね」


 僕は、つい最近間近で見たことがある。

 現実を味わったことで、「ハイレグに潰されたい」という夢が、見事にぶち壊されたわけだ。


 僕の素直な気持ちは、「あれ、なんか、思ってたのと違う」って感じだ。


「四人揃ったら、リョウマん家で遊ぼうぜ。あいつの部屋で、ひたすらハイレグ大戦やって、今年はキャンプとか挑戦したりしてよ」


 部屋の椅子にもたれ掛かり、ニヤニヤとほくそ笑むケンイチ。

 友達と遊ぶのが楽しみに違いない。

 僕だって、そうだ。


「お前の場合は、カンナさんとか来るんだろ」

「うん。だけど、僕は遠慮しないぜ。思いっきり、キモい遊びに巻き込んでやろうと思う」

「だから、俺たちモテないんだよなぁ」


 なんてことを話し、僕らは笑い合った。

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