迫るハイレグ。潰される顔 6/3(深夜)

 一か月前の僕だったら、美女二人と川の字で寝るなんて、「なんてラノベ」と笑っていただろう。


「ラノベじゃなかった……」


 相手が相手なら、あり得る話なんだと、僕は実感している。

 右からはカンナさんが、首に腕を回してきている。

 さっきの事があり、ちょっと怖い雰囲気を醸しつつ、ガン見してくるのだ。


「はむっ」

「んおおおっ!」


 耳を甘噛みされ、体が跳ねる。

 耳の穴から熱い吐息が入り込んで、脳みそを直に溶かされてるみたいだ。


 アノンさんがからかったせいか、愛情が半端ない。

 ちょろいのに、重くて、真っ直ぐな愛。

 耐えられるか、分からない。


「ん~……、モリオくんってぇ。キモいけどぉ。いいカモになるよねぇ」

「カモなんだ」


 分かっていたけど、言われると悲しい。


「どうする? 一回だけなら、ヤラせてあげるけど?」


 僕は知ってる。

 こういうのを美人局つつもたせっていうんだ。


 僕を虜にして、金やら何やらをむしり取るつもりだ。

 分かってはいるんだけど、ウィスパーボイスみたいに耳元で囁かれて、背筋がゾクゾクとする。


「あ~……、寝れねえ……。ダメだぁ。これ、死ぬぅ。陰キャにはキツイよぉ」


 股間が痛かった。

 ハチに刺されたみたいになっていて、頭では安易に手を出したら終わりと分かっているから、身動きができない。


「生のASMRヤバいよぉ。これ、死ぬわ」


 主に快楽で死ぬ。


「モリオは、流され過ぎ」


 イライラした様子のカンナさんに、無理やり振り向かされる。


「姉ちゃ~ん。二人のものって決めたじゃん」

「そうだけど……」

「独り占めよくないよ」


 ムッとして、カンナさんは拗ねていた。

 その顔が可愛くて、僕の方がコロっといきそうだ。


「私にとっては奴隷でぇ。姉ちゃんにとっては、彼氏でいいじゃん」

「……彼氏」

「うん、うん。あ、そうだ。こいつ、尻が好きなんでしょ」


 ゴロっと転がされ、仰向けにされる。

 すると、アノンさんは立ち上がり、いきなりズボンを脱ぎ始めた。


「はわぁ! わああ!」

「うっさいよ」


 パンツ姿になると、顔の前で跨った。

 そのパンツの生地には、憎たらしい兎のキャラが描かれている。


「や、やっぱり、そのパンツか! 君だったんだね! 分かっていたけどさ!」


 エロいメンヘラ女子が、キャラ物パンツというギャップ。


「兎が、段々、近づいて……」


 アノンさんは、僕の上に腰を下ろしてきた。

 生地越しに伝わる肌の温もり。


「ふもっ」


 幸せだ、という気持ちはあるんだけど。

 一つ、思う事がある。


 ……意外と、これ、重いんだな。


 そう。苦しかったのだ。

 顔の一点に全体重が集中する。

 上唇をぎゅっと押し付けられ、唇と歯が擦れあって、ちょっと痛かった。鼻は潰れているし、顔中の肉がクシャっとなって、目の前が見えない。


「ん~っ、んぐっ」

「あはっ。どぉ? 嬉しい?」

「ん˝ー、んっ!」


 まあ、嬉しいけど、苦しい。

 こういうのって、マンガだと良い匂いがして、柔らかくて、もっとエッチな物だと思っていた。


 ところが、嗅ぐ事なんてできやしないし、顔が苦しくて、何が起きてるのか、楽しむ余裕がない。


「どけよ!」

「んもぉ。押さないでよ」


 顔の前から、お尻がどけて、やっと息が吸える。


「はぁ、ハァ、……これ、もっとエロいかと思って……」


 目を開けると、今度は僕の大好きなハイレグがあった。


「……隕……石……が」


 どんどん落ちてくる。


「あ、あ、着陸……します! ん˝も˝ぅ˝っ!」


 鼻と唇に、ハイレグの細い生地が当たる。

 他は、生肌だ。

 気のせいか、少し湿っている気がするけど、そんな事はどうでもいいくらいに、僕は嫌な予感がした。


「モリオは、……こういうパンツが好きだから」

「ふ~ん。こいつも、ハイレグかぁ。男って、みんな同じだねぇ」


 ムッッッッチリとしたお肉が、僕の顔面の全てを包み込んでくる。

 鼻と口は塞がれ、顎は尻肉に挟まれる。

 目は潰れて何も見えない。


「んごおおっ! んっ! ん˝ぅぅ!」


 顔面騎乗位というものだが、これを見てエロく感じるのは、きっと第三者だろう。


 鍛えられた肉体は重く、順調に僕の顔を潰していた。

 顔の一点に75キロが圧し掛かるのだ。


 端的に言えば、マジで死ぬ。


「ン˝ン˝ン˝ン˝ン˝ッッ!」


 思わず、顎を包む尻をベチベチと叩いた。

 どけ、という意思表示だ。


「ねえ。こいつ、苦しんでない?」

「喜んでるんだよ」


 ベチン、べチベチベチッ。

 何度か叩くと、カンナさんの口から「んくっ」と、艶のある声が漏れる。


「んごおおおおおっ!」


 僕からは断末魔の悲鳴が漏れて、股の肉で潰されていた。


「そろそろどいた方がいいよ」

「……も、もう、ちょっとだけ」

「や、別に、おっ始めたっていいけどさぁ。死ぬよ?」


 と、アノンさんが止めたところで、僕の視界は黒く染まった。

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