魔装機装稼働開始
第13話 最適化処理
セッポが見守る中、スプライトに乗り込むジン。コックピットはシート背面の荷台が復座席に改良されており、サラマが着席している。
外観はやや異なっているが基本的なラインは同じだ。
『メンテナンスモード起動。――アップデート終了。クラスシステム追加。初期クラスであるソルジャーからスタートです』
スピリットOSのメンテナンスモードを発動させ、状態をチェックするジン。
聞き慣れた合成音声が流れ始める。
『――エラー。経験値所得が限界に達しています。速やかに消費してください』
「どういうことだ……」
「ジンとこのスプライトだけで一度ロウヒを倒したことになっているのです。蓄積された経験値が膨大なんですね」
「そんなに?」
「レイドボスをソロで倒したようなものです。この機装ははっきりいって人外レベルのスピリットOSに成長しています」
『そんなことはありません。私は名も無きスピリット。――――識別名を希望します。雷神系統ならシデンとかライテイでどうでしょうか』
「お前…… そんなに喋ったっけ」
『大量経験値に所得により、自我が確立されました。スピリットは意識がある強AIですが、人間が気付かなかっただけで、その名の通り魂が宿っているのです』
「名前は別にいいが、理由はあるのか。なんで紫電や雷霆になるんだ」
『スプライトは超高層紅色型雷放電現象としてのスプライトと魂や精霊を意味するスピリットの名を冠したスピリットOSのダブル・ミーニングとして命名されたものです』
「知らなかったぞ!」
「私と相性いいはずですね。さすがは日本由来、雷神の系譜ですね」
「その言い方、めっちゃ強そうだよな」
ただの氏子である。
「ではシデンでいいのか。レッド・スプライトなら紫もありだろ」
『了解しました。機体名シデンとして自己確立を進めます。――経験値を消化してください』
「試行錯誤するだけであっという間に時間が過ぎそうだな……」
「あなたの得意分野とか、方向性はありますか?」
「俺はリーコンだった。偵察や索敵だな。戦闘も魔法も使いたい。しかしそんなゲームはないな」
初めてセッポが口を挟む。
「あるだろ。勇者が」
「嫌だ! 第一勇者が偵察や索敵の斥候なんかするか」
「タンスの中身をあさったり旅人として魔法を使ったり……」
「やめろぅ!」
その様子をみていたサラマが後部座席から声をかける。
「ジン。ありますよね?」
「何が?」
「偵察も可能で戦闘も可能で魔法も使える職」
「あるっけ」
「あなたの国にはありますよ。――ニンジャ」
「ニンジャになるためには特殊なアイテムを用いる必要が……」
『必要ありません』
素っ気なく否定するシデン。
「裏技を教えてやろう。異なる魔法形態を先に覚えておくと、共通スキルで使える。全部は無理だが好きな魔法を使えるようになるぞ」
『経験値に問題はありません。魔法関連の基本職を修めます』
「決断が早いぞシデン」
『パイロットのサポートといってください』
「セッポ。wikiか攻略本が欲しい。VTuberの解説動画でもいい」
「そんなもんあるわけねーだろ」
「だよな…… すまない。言ってみただけだ」
『クラス完了。最適化処置を開始準備。経験値分配計算中』
「どんな感じになるのか想像がつかない」
モニタを確認するジン。
『それでは比較として旧データを表記します』
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◆製造:五稜重工業
◆スプライト一式
全長:6.78メートル
空虚重量:15トン
【ブランチ】 リーコン/Lv4
【クラス 】 無し
【アクティブスキル】
無し
【パッシブスキル】
無し
【サブクラス】
無し
BP:100
EN:10
MP:10
精霊力:0
武装
30ミリ機関砲/大型ドローン
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「これが以前のデータか。BPとはなんだろう?」
「HPやAPみたいなものね。body stiffness――機体構造のポイントのことですね。これが0になると稼働が停止します」
「ENはエネルギー、MPはシデンを通じた俺の精神力だな?」
「そうです!」
「防御力は表示はないのか」
『ありますがコーデや部位によって変わります』
この質問にはシデンが回答を行った。
「そうか。マニューバ・コートもそうだったもんな」
『パイロットの要望に応じた最適化クラスの設定を提案します』
「助かる。一度決定したらそのままか?」
『戦況に応じて組み替える必要もあります。ガレージ等では変更可能です。実戦を通じた最適化を行ってください』
「わかった。頼んだぞ」
シデンが演算を開始しスプライトのクラス最適化処理に入った。
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