第35話 嘆くより先に後に

 地下牢に投獄され、言い訳をかましても、王殺害の容疑は晴れないし、目の前で起こったことで、どう濡れ衣を脱ごうかも考えなければならない。


「どうしましょう。私たちこのままでは、斬首刑の後、さらし首ですよ!」

「で、あの悪魔はどっから連れてきたの。あいつを捕まえなきゃ刑は必ずだし」

「裏路地……最初は、親友だったんだ。会えて嬉しかったし、一緒に旅がしたかったから、連れてきた」

「そう、ま、私でも見分けがつかない変身術だったから、仕方ないわね」

「お、励ますなんて、珍しい」

「いいから、さっさとここから出るわよ。嘆くより先に行動」

「ですね!」


 石壁に微かな光で照らされているだけの牢屋。脱獄をしようと思えば、簡単であろう。私とガーリンでメテオラを唱え檻を吹き飛ばした。もちろん、兵士たちに気づかれるし、全力で逃げた。今は親友の皮を被って罪を犯した悪魔を探さないと。

 通路に続々と集まって来る。私を捕えようとする人たち。


「息を止めて! ―――スリープ!」

 兵士らを眠らせ、先頭ガーリン・エルナ・クリスタの順で出口に走った。地下を出ると城内であった。窓を蹴り破り城下町に消えていくように、兵士らを撒いた。


「もう、大丈夫かな」

「ええ、兵士も付いて、きてませんし」

「さぁ、どうやってあの悪魔を見つけようか。ラミア様は同族の場所分かったりしない?」

『わからん』

「わからんだってさ」

 頭を抱えて込んでいると、肩を叩かれた。この物語の終わりを予感したが、そこには見覚えのある人物がいた。

「ヤッ、さっきぶりにゃ、こんなとこで何してるのかにゃ?」

「いや、まぁ、とある人探ししてて、その作戦会議的な」

「目泳ぎ過ぎにゃ、安心するといい、この耳で全て聞いてたにゃ」

 聞かれちゃ嫌だから隠れてたのに……


「大丈夫、至高の酒を飲ませて貰ったから、恩返ししにきたのにゃ、兵士に突き出したりしないにゃん」

「そう、でも何も手掛かりはなくて」

「任せるにゃ、これでもわっちの耳は飾りでついてるわけじゃないにゃん」


 耳をまっすぐ立て、左右に揺らしながら、不穏な音が立っていないか、探った。悩ましく、苦しそうな表情を見せると、途端に直立した。


「いたにゃ、壁外にある廃れた教会。そこにいる」

「耳、良すぎない!?」

「これでも、元獣人の皇族……そこの兎より多芸にゃ」

「無駄話はいいから、さっさと、行かないと、そいつが動かない訳じゃないんだから」

「案内、お願いしても?」


「いいにゃ、メアリーも休憩中で暇だし、ついてくるにゃ」

 分かりやすい太めの尻尾振り回しながら、先を歩いていく。追随しどうやって捕えるかも話し合った。運命を恨んでも、彼女を憎んではいない。話をしたい。

 悪魔がいる廃れ朽ちた教会はお花畑の中、絵画であれば買い手がでるそんな絶景な場所。教会内は久の天井から光が零れている。そんな最奥にあの悪魔がいた。


「あら、天使ちゃん来たの」

「悪魔が教会で何を祈ってたんだい」

「この都市の崩壊かしらね」

「それで、どうして王を殺したの?」

「母を失って住む場所を奪われたあなたになら、わかると思うわ」

 しばらく悩んで適当に思いついた言葉を……


「運命か」

「あなたがそう思ったのなら、それが正解」


 勇者、あなたは私に似てるとそう、一目見た時から感じていた。邪眼で覗いた記憶を通して―――そう運命の助長は神にしかできない


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る