第2話

「私の名は、エルライ・キファ・アウストラリス。聖ベータ・フォルナーキス騎士団の精鋭騎士長だ。よろしく頼む」

黒のマントを羽織る男に礼をした。だが男は一言も言わない。しゃべっているのは隣のアルケスという執事だけ。

(こいつが魔王を倒した英雄か…。なぜ顔を隠す?なぜしゃべらない?)

エルライ達がここに来た理由は数日前に遡る。


「エルライ様!大変です!!」

いつものように鍛錬をしていた時だった。副官が走って来た。

「何があった」

「魔王が、倒されました!!」

「なんだと!?」

魔王といえば長年国を悩まして来た、我が国の宿敵である。それをたった一人で倒したというでないか。

「サムル王には私から伝える。お前は、その情報を詳しく調べろ。」

「はっ!」



すぐさまこの話は議会にて話された。

「魔王が倒されたのはまことか!?」

「はい。国民もそのように噂していました。また、ここ最近魔族による被害が全くというほど出ておりません。信憑性は高いかと。」

エルライの言葉に大臣達がどよめく。

「しかし今までどんな勇者を派遣しても一度も倒せなかったんだぞ?名無しの傭兵が倒せるシナモノではないだろ!」

「だが、エルライ殿は嘘を言うような人ではないだろう」

「軍を派遣して調べると言うのは?」

「静まれ!!」

王の一言で話すのをやめた大臣。

「今、調査隊が調べておる。しばし待て」

「その必要はありません、サムル王」

装飾された扉の前に一人の騎士が……。

「アルデラ!なにか分かったか!?」

アルデラ・キファ・アウストラリス。この国の騎士団の総騎士団長であり、エルライの兄だ。

「はい。魔王を倒したと思われる者を見つけました」

「でかした!」

アルデラは部下が調査表をサムルに渡す。

「ライジェルと言う男だそうです。近々その者に会おうと思っております」

「そうか……。では、私も行こう」

「サムル王、自らですか!?」

またしても大臣達がざわつく。エルライは一歩踏み出し、声を上げる。

「では、私も護衛の為ついても宜しいでしょうか」

「ああ、頼む。では緊急議会を終了する。解散!」



「エルライ。お前が着いてくるのは助かる」

玉座からの帰り、アルデラはエルライに話しかけた。

「どうゆうことですか?」

「我らも色々探ったんだが、めぼしい情報が無くてな」

「!? 兄上の調査隊でですか!?」

調査できない事はないと言うほど有能な調査隊、ルシェルシュ。それですら情報が掴めないとは……。

「ライジェルが何者かわからない。だからこそお前はしっかりサムル王をお護りしろ」

「はい。我が一家の名誉に懸けて必ずサムル王をお護りいたします」

「頼んだぞ」

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