第3話 模擬戦

 はあ。

 そういえば今日は体育の授業があったな。


 この学校は体育の授業に超能力の開発授業が組み込まれていて今現在絶賛その授業をしている途中である。

 しかもB組と合同でだ。

 B組にはあの綾霧唯がいる。

 ちなみに俺と達也はA組だ。


 超能力を通常の体育館で使おうものならものの数分で崩壊するため、対超能力合金でできた模擬戦場で超能力の開発授業をする。


 そんなことを考えていると体育教師の須崎涼太すざきりょうた先生が入ってきた。須崎先生はこの学校の卒業生らしく、序列も10位台にまで上り詰めたこともあるらしい。


 「よーし、野郎共授業を始めるぞー」


 授業が始まるため皆が並び始め、2分ほどで並び終わり挨拶をして始める。

 先生に俺はいつも通り


 「先生。見学でいいですか?」


 と聞き、須崎先生は


 「ああ、早坂か。分かったいいぞ」


 と了承を取って見学を始める。



☆☆☆☆☆☆☆☆



 クラスメイトを見る。

 超能力の訓練をしている。


 放出系、つまりは炎を出したりするやつは、炎の操作だったり、狙った空間だけを燃やしたり、と練習している。


 精神操作系は互いに精神操作を掛け合っている。

 こっわ。


 身体強化系は準備運動をして能力のかかり具合を確かめたり、組み手をしたりしている。


 現象・概念がいねん操作系は新たな発見をするために能力を使いまくっている。


 残りのその他は作用系に割り当てられる。

 分かりやすく言うと自分の体の傷を治したり、サイコキネシスだったりが作用系に入る。

 これらの訓練は現象・概念操作系と同じような訓練をしている。


 先程俺に喧嘩ふっかけてきた綾霧唯の方をチラリと見てみると、須崎先生に何やら相談をしていた。

 何か嫌な予感がする……。

 あくまで予感だけど……。


 「須崎先生。早坂海人君と組み手をしていいみてですか?」

 「早坂とか……。うん、いいんじゃないか? たまにはこうゆうのもするべきだしな。ただし、もちろん超能力は使用禁止だ。早坂は無能力者だからな」

 「はい、もちろんです。ありがとうございます!」

 「ああ」


 ……は?

 俺は自分の耳を疑った。

 いやいやいや、何かの間違いだろう。


 うん、そう信じたいがその夢は叶わず須崎先生と綾霧がこっちに来る。

 純粋な本音で語ろう。

 ……こっちに来んな!!!

 そう思いながいると綾霧がコッチを見ながらめちゃくちゃニヤニヤしてた。

 マジでぶん殴りたくなったのはみんなも共感できるだろう。



☆☆☆☆☆☆☆☆



 「さて、聞こえてはいただろうがここの綾霧と組み手をしてこい、早坂」

 「早坂海人君……だったよね、よろしく!」

 「いや、この人序列30位台ですよ。僕なんかが相手になるわけないじゃないですか」

 「そこまで心配なら俺が審判につこう。これでどうだ?」

 「……それでも危ないのは変わりないじゃないですか」

 「……そこまで言うなら最終手段だ。やってくれないと…体育の成績が"1"になるかもしれないな」

 「もちろんやらせていただきます!」


 即答する。

 成績を盾にするなんて教師のすることか?


 俺は世間では無能力者だからこの学園では超能力の項目がない。

 つまり、それ以外の一般科目で勝負しなければいけないからひとつでも評価が"1"になるとかなり厳しくなる。


 だがまあ、受けてしまったのはしょうがない。

 やるか。

 そして程々にして負けよ。

 めんどくさいし。


 「ねぇ、組手ちゃんとしてね?」


 ……コイツ、エスパーかなんかの類じゃないのか?

 俺の内心をズバリあてやがったぞ?


 「わかったから、行くぞ」

 「……うん」


 なんでお前不服そうなんだよ。

 不服なのはこっちだっての。

 

 「よし、ならば始めるぞ。見たいものは手を止めていいぞ! 参考になるだろうからな! 綾霧唯対早坂海人の模擬戦を始める! ……始め!!」

 

 須崎先生が腕を振り下ろす。

 …おい、さっき模擬戦って言ったぞ。

 組み手じゃなかったのか…?


 まあいくら言っても始まったものはしょうがない。


 その合図があった瞬間に俺は綾霧に速攻をしかけ、拳で殴る。

 これが組手だったらこんなことはしなかったが模擬戦なら話は別だ。

 すると意外にも綾霧は俺のパンチを難なく避け、逆に俺に殴りかかりカウンターまでしてきた。


 意外だな。

 コイツは能力で力任せに戦うタイプだと思ってたのにな。

 俺は印象づけるためにそのパンチを真正面から掴んだ。

 綾霧の拳を掴むと明らかに動揺していた。

 チャンスとばかりに俺は綾霧の拳を掴んだまま殴りかかろうとすると、綾霧は身体をひねり、俺から拳を掴んでいた手を離させて俺の攻撃を回避する。

 

 「……今のを避けるって意外と体術できるんだな」

 「アンタこそ戦いはお断りみたいな雰囲気を出てたくせにやっぱり結構戦えるじゃない」

 

 う……。

 それを言われると元も子もない。


 そんなやり取りをしながら俺たちは構えなおす。


 今度は綾霧が仕掛けてきた。

 パンチと蹴りを不規則に繰り返し、フェイントも織り交ぜてくる。


 この歳にしてはかなり体術ができてる。

 この学校でも上の下から中位はありそうだな……。

 だが俺は綾霧の攻撃をかすることも無く全て受け流している。

 するとだんだん綾霧の息が上がり、攻撃のペースが少しづつだか落ちてきた。

 

 「……攻撃しなさいよ」

 「いや、いいよ。このままでも練習になるし」 

 「フン、余裕ってワケね。それならいいわ。本気を見せてあげる」

 

 そう言って綾霧は一度、俺から距離をとる。

 次の瞬間には綾霧は俺にものすごいスピードで詰めてきた。

 そして俺に今までのパンチの中で一番キレとスピードのものをしてきたが紙一重で俺は躱す。


 危なかった。

 では少し、ほんの少しだけ余裕が無くなる程度だったが。

 それにしてもコイツ、使


 「……なんで当たらないのよ! 当たりなさいよ!」

 「なんでだよ!? 嫌に決まってるだろ!」


 高校に入学してから一番の理不尽ワードを聞き、反論する。

 そうして模擬戦は俺の降参で終わった。

 ちなみに理由はスタミナ切れだ。

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