第2話 綾霧唯

 『序列戦』それはこの学校の根幹をなすと言っても過言では無い制度だ。

 この学校の全校生徒を縦に並べ、1位、2位、3位…というふうに決める。

 一対一で戦い、勝った方が、負けた方の順位より下だった場合負けた方の順位になり、負けた方やそれ以外の人は一つ順位が繰り下がる。

 また、勝った方の方が負けた方より順位が高かった場合、順位変動は起きない。

 

 ちなみにこの『超能力者の巣窟』の九つの学校同士でも序列戦はする。

 それをコイツはやると言っている。

 大体俺はこの学校で唯一のなのにだ。

 正確に言うと少し違うが。


 「さっさと答えなさいよ!」


 やれ、理不尽だ。


 「大体、俺は無能力者だよ?なのに俺を序列戦の相手に指名するって言うのか?」

 「いや、あなたは絶対に能力を持っている。」

 「なぜそう思う?」

 「教えるわけないじゃない」


 不思議だな。俺はここでは無能力者のはずだ。


 あの理事長の権力で無理矢理信じさせたのに。


 「まあ、断る。」

 「なんでよ!?」

 「いや、だって俺無能力者だし。」

 「いや、あんたは能力を持っている。」


 はー、めんどくさ。


 「うん? 海人が女の子と話しているだと!?」


 その声に対して反応するのは俺と話している女の子だけだった。

 なぜなら俺はその声の主を知っているからだ。


 ソイツを使ってここから離れるための言い訳作りを始める。

 そして思いついたことが。


 「……おい。達也、ちょっとトイレに付き合えよ」


 そう、とてもシンプルでオーソドックスな『トイレについてきて』だ。

 俺は急に声をかけてきた男子生徒、橋本達也はしもとたつやにそう言い放つ。


 「え? ちょっと嫌っ……分かったよ」

 「ああ。それとそこのヤツ、序列戦は断るからな。……ってかそもそもお前誰だよ!?」


 俺は誰と話していた?

 そもそも俺に話しかけてきたやつは誰なんだ?


 「ああ、その人は綾霧唯あやぎりゆい。序列35位の1年生」


 達也が説明してくれた。

 綾霧唯……か。

 どこかで聞いたような……。

 

 まあいいか。

 それにしても一年生で序列30位台は凄い。


 「まあどっちにしろさっき言ったように序列戦は拒否するからな。行くぞ、達也。」

 「え? ……ああ、うん。」


 そう言って教室を出る。

 嫌な予感がするな。



☆☆☆☆☆☆☆☆



 俺は達也と廊下を歩く。


 「海人出るの? 序列戦に」

 「いやいや、出るわけないだろ?」


 達也の言葉を即座に否定する。

 俺は序列戦には出ない。

 何故なら俺が出てはいけないからだ。

 アレは、序列戦は俺たちのようなものが出たらスポーツでは無くなるからな。


 ま、断ったしあいつが付いてくることもないだろうn……。


 「ちょっと待ったァァァァァ!!!」


 よく見ると綾霧が俺たちを走って追いかけてきた。

 それを見て思わず。


 「……おい達也。なんであいつきてんの?」

 「分かるわけないだろ!?」


 まあ、そりゃそうだな。

 そんなやり取りをしているうちに綾霧は俺たちの前まで来た。


 「なんだよ綾霧。まだ用があるのか?」

 「アリアリに決まってんでしょ!? あたしと序列戦に出て戦いなさい! 拒否権はないわ!」


 やれ理不尽だ。

 どうしたもんだか。

 まあ、とりあえず


 「もうそろそろ授業が始まるからまた後でな。」


 そう綾霧に告げ、俺は教室に達也と向かっていった。

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