7. 追いつめられたサラ
サラ・キングは今、最高の気分だった。
今日は待ち望んでいた秋のフェスティバル。
召使いに作らせたこの可愛いコスチュームと、生まれつきの美貌のおかげで、学校中の男の子は私に夢中になる。
その中には超絶イケメンの私の王子様、ヒュー・クリーヴランドも入っている。
だって今日はいつもと違って邪魔者がいないから。
ついにクララ・ブルックをやりこめることに成功したのだ。
クララのレヴェタッサーの材料をすり替えて、衣装をズタズタに引き裂いて、入場券を盗んだ。それも、あの子の友達の分まで。
来週学校に来たら、レーナやドロシーはもうクララの友達をやめるだろう。
私はクララからヒューを奪い返して、彼と結婚して、プリンセスになるの!
そうしたら、パパにお願いして綺麗な島を買ってもらって、私たちだけの王国を作るわ。
そこではみんなが私を慕って……
「ねえ、サラ?アリソンを見なかった?」
メグに声をかけられて、サラは妄想から我に返った。
二人は今、フェスティバルの会場でアイスクリームの屋台の列に並んでいた。
「いいえ、見てないわ。きっと寝坊でもしたんでしょ。それよりどう、この髪型?」
「素敵よ。それにしても、邪魔者がいないってなんていい気分なのかしら。クララ・ブルックは今頃、ド田舎の家で泣いてるわね。
盗んだ入場券はどこにやったの?誰にも見つからないようにしてる?」
「もちろん」
クララたちの入場券は安全な場所にある。
それは私のポケット。肌身離さず持っておけば心配はない。
破り捨てるという手もあるが、後からクララたちに返してやる方がもっといい。
そうすれば、みんなはクララたちが勝手に入場券を失くしただけだと思うだろう。
こんなにキュートなのに、頭も良いなんて、私って完璧だわ。
サラはいつものように自分に酔いしれていた。
ところが、そこに邪魔が入った。
「ちょっと、ウソでしょ?!」
そんなはずがない。
クララ・ブルックとその友人たちがここにいるなんて!
その上、アリソンまで3人と一緒にいる。
これは悪い夢だ。そうに違いない。
「何がウソなのよ?」
サラの視線の先を辿ったメグも、その場に凍り付いた。
「な、何であなたたちがここにいるのよ?入場券がない人は会場には入れないのよ。」
サラは慌てながらも、いつもの偉そうな口調を取り戻した。
「分かった。あなたたち、入場券が盗まれたからって、受付係を出し抜いて来たのね。おめでとう。
でも、あなたのために忠告してあげる。今すぐ家に帰りなさい。ボロボロのコスチュームじゃあ、ダサくて皆に笑われるわよ。」
サラは満面の笑みを浮かべた。ところが、クララはこう言った。
「忠告ありがとう。でも、心配いらないわ。」
クララが、コスチュームの上に着ていた黒いマントをさっと脱いだ。
サラは息を呑んだ。
サラが引き裂いたはずのゆったりとしたロングドレスは、ふんわりしたミニスカートに様変わりしていた。
裾のところに切れ込みがあって、そのおかげで裾が大きく広がっている。
クララは、レーナのアイデアで、ロングスカートの裾を短く切り、ミニスカートに変えてしまったのだ。
ミニスカートを履いているおかげで、クララのほっそりとした脚はより綺麗に見えた。
クララのコスチュームを引き裂いたことで、サラはコスチュームを台無しにするどころか、むしろ、ますますオシャレにしてしまったのだった。
そして、コスチュームのあちこちには雲の上の木の実や葉っぱが飾られており、雲の上の世界によく馴染んでいた。
(ここでは、葉は深緑から赤や黄色に変わるのではなく、エメラルドグリーンから金色、銀色、白色などに変わるのだ。)
また、長い髪にも木の実や葉っぱを飾り、三つ編みでオシャレなアップスタイルにしていた。
いつも三つ編みをしているサラにとっては、これは悔しいことだった。
「あんたが何を着ていようとどうでもいいわ。問題は、あんたたちが不正にフェスティバルに参加していることよ。
私、スターヴィリックにあんたたちのこと告げ口してやるわ。」
メグが言った。
きっと、3人とも慌てると思っていたのに、ドロシーだけはなぜか笑みを浮かべた。
「それは、こっちのセリフよ。」
「どういう意味よ?」
サラにはわけが分からなかった。
「ねえクララ、レーナ、私たち、入場券が盗まれたことを誰かに話したっけ?」
「アリソンに話したけど、他の人には言ってないわ。」
「私もよ。つまり、私たちの入場券が盗まれたことを知っているのは、私と、レーナと、クララと、アリソン、そして犯人だけ。」
サラとメグは次第に自分たちが何をしてしまったか分かってきた。
「おかしいわね。サラとメグは私たちが入場券を持っていないことを知っているみたいよ。
それに、私のコスチュームが誰かに引き裂かれたこともね。このことも、誰にも言っていないはずなのに。」
「これが何を意味するか分かりますよね、スターヴィリック先生?」
ドロシーの言葉に、サラとメグはぎょっとした。
スターヴィリック先生?
まさか、スターヴィリック先生に今の会話を聞かれていたのだろうか。
「ミス・キング、君はミス・ブルックたちの入場券を盗んだのかね?」
スターヴィリック先生が物陰から姿を現した。
これまでの会話は全て、スターヴィリック先生に聞かれていたのだ。
サラは悔しさと怒りで、はらわたが煮えくり返りそうだった。
「まさか!そんな卑怯なこと、私はしてません!」
サラは、不当に疑いをかけられたふりをした。
だが、スターヴィリック先生から見てみれば、これは見え透いたウソだった。
「では、ポケットの中身を全部出したまえ。
何もしていないなら、ポケットの中身を出すくらいわけないことだろう?」
「そんな!先生、それはプライバシーの侵害です。」
「そうかな?ますます疑いが濃くなるのと、プライバシーの侵害と、どっちがいいかな?」
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