6, ピンチ!
「「「「スターヴィリック先生!」」」」
4人は飛び上がった。
いつも通りの黒くて長いマント、束ねた長髪、黒革の指なし手袋、銀のステッキ。4人の後ろには、スターヴィリック先生がいた。
「何やら騒がしいからここに来てみたら、ケンカ騒ぎがあってね。
それを静めようと思ったら、ミス・トンプソンが受付係のテントの中に隠れたように見えたんだ。
君たちは入場券を受付係に見せずに会場に入ったように見えたんだが、私の勘違いかな?もし、入場券を持っているなら見せて欲しい。」
スターヴィリック先生は静かに言った。
「今、ここで、ですか?」
クララは、少しでも時間を稼ごうと、分かりきったことを聞いた。
「そう。今、ここで、だ。」
スターヴィリック先生の声は強くも大きくもなかったが、それでいて有無を言わせぬ迫力があった。
「さあ、入場券を見せてくれ。私も君たちが不正をしているとは思いたくない。」
クララは、こっそりアリソンをつついた。
入場券を見せろと言いたかったのだ。
アリソンは入場券を持っているから、責められずにすむ。
しかし、アリソンは言った。
「先生が見たものは真実です。勘違いじゃありません。私たちは入場券を見せずに会場に入ろうとしました。4人とも。」
スターヴィリック先生は厳しい顔で頷いた。
スターヴィリック先生は作戦の一部始終を見ていたのだから、アリソンが入場券を持っていたことは知っているはずだ。
だが、アリソンが入場券を持っていないと言っても否定しない。
アリソンが他の3人を見捨てなかったと分かっているのだ。
「君たちは、これが悪いことだということは分かっているね。
そして、面白半分でやったわけではないだろう。どうしてこんなことをしたのか、説明してくれ。」
こうなったらもう仕方がない。全てを白状するしかなかった。
クララは一歩前に出て、説明を始めた。
「まずは、不正をしてごめんなさい。
それから、先生がおっしゃった通り、これにはわけがあります。私たちは、入場券を盗まれてしまったんです。犯人はサラです。間違いありません。
だけど、それを正直に先生に申し上げても、信じてもらえないと思いました。サラが私たちの入場券を盗んだという証拠はないのですから。
だから、私たちはこっそり会場に入ろうと思いました。今から考えるととても愚かなことでした。」
スターヴィリック先生は顔をしかめた。
「間違ったことをしたと分かっているならそれで良い。
しかし、証拠もないのにミス・キングを疑うというのはどういうことだね?
君とミス・キングの仲が悪いことは、私も知っている。
だが、証拠がないのにミス・キングを責めることはできないよ。」
スターヴィリック先生の顔は優しかった。
「証拠ならあります。
ここにはないけれど、今からお見せしますから、ついてきてください。」
ずっと黙っていたドロシーが言った。
他の3人は驚いてドロシーを見つめた。
この展開は作戦には入っていない。
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