3. ドロシー
今日は、絶対にレーナと仲直りをしよう。クララは、固く決意していた。
しかし、現実は厳しいものだ。なかなか、レーナと話す機会が訪れなかったのだ。レーナはクララを避けているようだった。
昨日、あんな態度をとってしまったのだから当然だ。だけど、もしかしたらレーナはあまり怒っていないかもしれないなどと、甘い期待をしていなかったわけでもなかったから、ちょっとショックだった。
その上、今日は何もかもが上手くいかない日だった。
まず、提出するはずの宿題を家に忘れてきた。
それから、うっかり階を間違えて歴史の授業に遅れ、ぼんやりしていたせいで先生に質問された時に答えられなかった。
その後は廊下で意地悪な上級生にぶつかってしまい、思い切り睨まれた。
どれも大したことではないのだが、こういうことが続くとさすがにげんなりしてくる。また、いつものようにレーナが隣で慰めてくれないダメージは大きかった。
だが、悪いことばかりだったわけではない。ネリーとドロシーという、新しい友達もできた。
ネリー・オブライエンは色白で太った子で、温和だが、じれったいほどのマイペースだった。その見た目と性格から彼女はマシュマロに似ている感じがした。だが、そこが憎めないところであり、彼女の魅力だった。
ドロシー・キャンベルはブリュネットの髪をおさげにしていてカンザス出身だ。その上、制服が青色なものだから、クララは『オズの魔法使い』のドロシーとそっくりだと思った。
あまりにクララのイメージのドロシーと似ているので、むしろドロシーの苗字がゲイルでないのが不思議なくらいだ。
ドロシーが声をかけてくれたとき、クララは思わず、
「あなた、オズに行ったことはある?」
と聞いてしまった。
ドロシーのことをからかおうと思ったわけではない。ただ、本気で気になったのだ。
「ええ、あるわよ。」
ドロシーは真顔で言った。クララが肝を潰していると、ドロシーはさらに、
「オズってとてもいいところだわ。お家が一番だけどね。私、黄色いレンガの道を歩
いてエメラルドシティに行ったのよ。」
と言った。このとき、ドロシーの顔にはいたずらっぽい笑みが浮かんでいた。
「じゃあ、オズマ姫には会った?」
これは、『オズの魔法使い』の続編まで読んでいないと答えられない質問だった。
「ええ、会ったわよ。腹ぺこタイガーや、ビリーナにもね。あと、チクタクとポリク
ロームにも会ったわ。」
このときには、クララはもうドロシーに抱きついていた。
「あなたって最高!」
もちろん、レーナにはかなわないが、クララはドロシーやネリーとは親しい友達になれる予感がした。
午前中はレーナと話すことができなかったから、昼休みに謝ろうと思っていたのだが、カフェテリアに行っても、いつもの席にレーナの姿はなかった。
念のため他の席も見てみたが、レーナはどこにもいない。
「ねえ、レーナを見た?」
クララはザカリーとダグラスに尋ねたが、二人とも首を振った。
―レーナは私を避けているのね。もう私の顔も見たくないんだわ。
クララはそう思うと涙が出そうだった。
「なあ、ずっと思ってたんだけど、君たち今日はどうしたんだよ?何かあったの
か?」
心配そうに声をかけてくれたダグラスを無視して、クララはカフェテリアから飛び出した。
勉強をして疲れたはずなのに、ちっとも食欲がなかった。
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