3. 大忙しの一週間
それからの一週間は大忙しだった。
日曜日、クララはスティーブンに頼んでバレエ・クラブの部費と、必要なものを買うお金をもらった。
もちろん、それがシャトー・カルーゼルのバレエ・クラブの話であることは伏せてある。
スティーブンは地上の学校にバレエ・クラブができたものと思い込んでいるはずだ。
愛車を修理するのにお金をたくさん使っていたスティーブンは、部費は出してくれたが、バレエ用品を買うお金を出すのは渋った。
しかし、クララが「おねがーい!」と目をパチパチさせたら、「分かった、分かった。パパの負けだよ。」と言ってお金をくれた。
クララは、そのお金と、ジュリアの誕生日プレゼントを買おうと思って貯めておいたお小遣いを足して隣町まで行き、必要な物を買った。
幸い、クララは足があまり大きくならないたちだったから、ポワント(一般に言うトゥーシューズのこと)とバレエ・シューズは買わずに済んだ。
贅沢を言えば予備のポワントが欲しかったのだが、それはまた今度にしよう。
月曜日は早めに学校に行って、彼女いわくロッカーメイトのアリソンと一緒にロッカーを飾った。
アリソンは彼女が飼っているという猫の写真と、大好きなカントリーミュージシャンの写真を持ってきた。
クララは小さい頃に友達にもらって使っていなかったキラキラのシールを持ってきた。
案の定、アリソンは「わー!それ、超カワイイー!!」と言った。
1~3時間目に普通の授業を受けた後、4時間目は魔法学だった。
地上では、グローバル化の進行に伴って、最近はどこの国の人でも英語を話せる人が多い。
それと同じように雲の上の世界でも、魔法使いでなくても魔法を使えることが望ましいと言われる時代なのだ。
昼食を食べた後の5,6時間目はスターヴィリック先生が受け持つ、演技の授業で、とても愉快な時間を過ごした。
面白かったのは、スターヴィリック先生の授業というより、むしろ、演技について語るスターヴィリック先生の方だった。
火曜日は、バレエ・クラブのオーディションで踊る振り付けを教えてもらった。
バレエ・クラブは人数が少ない。
入部する生徒は多いのだが、練習が厳しくて学年が上がるとともに、退部する人が増えるのだ。
そのため、オーディションを受ければ、よっぽどのことがない限り、入部は確実だ。
しかし、オーディションは本気で挑むつもりだった。
ただでさえブランクがあるのだから、オーディションがイマイチだったら、バレエが下手だと思われてしまう。
水曜日、木曜日、金曜日は、月曜日や火曜日に負けず劣らず忙しかった。
朝早くに学校に行き、1~3時間目まで、目まぐるしい速さの授業を受ける。(その上、歴史と地理は地上と雲の上との二種類あった。)
その後はフェレーヴェルのための授業を受け、レーナ、ザカリー、ダグラスと昼食を食べる。
午後の二時間もフェレーヴェルの授業を受け、それが終わるとバレエのスタジオを借りてオーディションの練習をする。
オーディションや入部試験のないクラブには、着々と新入部員が入って来ていた。例えば、メグはパーティー・クラブに入ったし、アリソンは楽器クラブに入った。
アリソンはギターとピアノができて、歌の才能もあるそうだ。
好奇心の強いザカリーは自由研究クラブに入った。自由研究クラブは、何でも好きなことを調査できるクラブなのだ。
一方で、入部試験やオーディションのあるクラブに入りたい生徒はその練習に追われていた。
レーナはアーチェリー・クラブに入ることを決めて、毎日グラウンドで、弓を引いて練習していた。
力が強く、体格もがっしりしたダグラスは、槍投げクラブの入部試験に向けて特訓中だ。
ストロベリーブロンドの少年、キャメロンは先日NGTで会った時、演劇クラブのオーディションを受けると言っていた。
また、アリソンも演劇クラブのオーディションを受ける。歌も好きだが、演技にも興味があるから、兼部したいらしい。
もちろん、バレエ・クラブに入りたいクララも、3週間後に控えるオーディションに向けて必死に練習に打ち込んでいる。
クラス・ジョーヌでは、早くもいくつかの仲良しグループが出来つつあった。
クララはもちろんレーナ、ザカリー、ダグラスと同じグループだ。
中でも特に仲がいいのはレーナだが、コンバチェッサーの訓練を一緒に受けたせいか、この三人とはもう家族のように仲良しになった。
土曜日は、ガッシュワット先生からコンバチェッサーの訓練を受けた。
まずは盾を作る復習をして、その後は「防御の輪」を作る練習をした。
「防御の輪」は杖の持ち主を包むシャボン玉のようなもので、ディアブレーヴの攻撃から身を守ることができる。
盾よりも強いが、その分、作るのに時間がかかる。
戦いの時に咄嗟に作るのは盾で、危険な場所に踏み込む時に使うのが「防御の輪」だ。この日は、その使い分けも練習した。
その日クララは家に帰ると、まだ日が暮れて間もない時に眠り、次の日、太陽が空高く昇るまで寝続けていた。
とにかく、本当に充実した一週間だった。
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