第7話 こちらではゲーム終了。あちらでは支配開始。

〈モダンベルルム〉終了後はすぐさまホームルームとなっており、それが終わると各自帰り支度じたくを始めた。

 孝徳タカノリ和佳カズカの席に荷物を持った菱田ヒシダ明乃アケノが近づく。

「波山くん、今日もすごかったねー!対して和佳は・・・」

「もう!思い出させないでよ!」

「何かあったのか?」

 あたふたと慌てている和佳を見て孝徳が明乃に尋ねる。

「私が倒した獲物えものを自分が倒したと思っていたり、私に向かって・・・」

「もうやめて〜!」

 和佳が両手をパーにしバタバタさせ始めた。

「なんだ?FF(フレンドリー・ファイア)でもしそうになったか?」

 孝徳が的確に言い当てる。その一言で、ついに和佳は撃沈する。

「それはそうと、孝徳くん。今回は死ななかったの?」

 明乃がニヤッとした顔で孝徳に尋ねる。

 孝徳はカッコつけるように飄々ひょうひょうとした表情で彼女を見た。ピースサインもえて。

「ああ、今回も戦死ゼロだ」

「なんかその言い方ムカつくわ〜。私もちなみにゼロなんだけど、和佳はどうだったの?」

「私は、今回はなんとかゼロ」

「どうせ逃げ回ってたからだろ。お前今日の撃破数キル、3しかないし」

 和佳は、物凄い剣幕で孝徳を睨みつける。

「お・・・俺は、ちなみに戦死3だったぞ。やっちまったな〜。ま、今回はそんなに戦死数多く無かったから良かったよな!」

 菱田はその場の空気を和ませようと笑いながら言ったが・・・。反応がない。

 悲しいかな、誰も聞いていなかった。

 菱田を除く三人は各々、自身の戦績と互いを批評することに花を咲かせていた。

 ❇︎

 空が汚染物質で濁り、倒壊しそうな建物が並ぶ荒廃した世界の中、廃車の上で本を読む人型・・が一体いた。

 そこにもう一体の人型・・が近づいてくる。

「α1(アルファ・ワン)そろそろ時間じゃねえか?」

 α1と呼ばれたはパタンと本を閉じると、目を声の主の方に向けた。

「わかった。β3(ベータ・スリー)。教えてくれてありがとう」

「良いってことよ。ま、心構えぐらいしか俺たちに出来ることも、許されていることもないけどね」

 そう会話している時に、突如脳内に表示される文字。

待機状態ストバイモード解除』

 それと同時に彼らの体の自由が奪われる。

 α1は唯一動く目を伏せた。

 脳と目が機能している自我・・を持ったままの状態で、戦場へと強制的に向かわされる前触まえぶれ。

 ━何とも嫌な感じだわ━

 α1は脳内で呟く。あきらめの色も含ませて。

 α1と、β3は同じ目的地に向かって歩き出した。

 

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