第5話 Br Bl Po (2)
「どう言うことだ?」
「俺が単身で突っ込む。その散弾銃を
「はあ!?マジで言ってんのか?」
菱田は
それもそのはず、敵突撃銃部隊は確認しただけでも三十はいる上に、遠方に
その中を突っ込むのは、自殺行為以外の何物でもない。
「マジで言ってる」
α1(アルファ・ワン)はβ3(ベータ・スリー)の方を向き、
「でもなあ、お前・・・」
「まあ見てろ。
α1にβ3から引き継いだ、散弾銃とショットシェルベルトを装備すると、片手には
それ
だが、同時に男心くすぐられる戦術でもある、とも感じてはいたが。
そうこうしている間に敵
相手は学生。部隊全員がいっぺんに弾切れになることの危険性など、軍人ではないため理解もしていない。
孝徳はそれを好機と見て飛び出させた。
「行ってくる」
「ちょっ・・・おま」
飛び出すと同時に飛んできた、一発の弾丸。それは先ほどの
孝徳は操るα1の重心を低くさせ、地面をスライディングさせることにより回避し、そのまま敵群に突っ込んでいく。
敵たちの多くは慌てて
α1はそのうちの一人の
そして次々とリロードを終えることができていない敵兵に向かっていき、
そのスピードは支援射撃を行う菱田には捉えることができないほど速い。
一体どれほどの速度でキーボードを叩いていることやら。
「マジか・・・・速すぎるだろ」
これまた敵兵から奪い取った自動拳銃をゼロ距離で頭部に発砲、
そうしているうちにα1は
孝徳はα1を駆り、ついには彼らを全滅させた。
菱田はその圧巻の光景に息を呑んだ。
「すげえ・・・さすが我が校の一位だぜ」
しかし次の瞬間、菱田の画面がブラックアウトする。
例の狙撃手に
「くそっ!悪いα1!」
孝徳はその光景をチラリと見て舌打ちした。
「俺はこのまま最前線に出て戦車を強奪する!
「了解!」
ブラックアウトした画面から聞こえる孝徳の指示。それに応えると、
「γ4(ガンマ・フォー)、狙撃手の位置が判明した。データを送るから殺せ」
素早いタイピングで、戦闘を行いながらデータを和佳に送信する。
「了解・・・って2000ヤードも離れているじゃない!?無理よ、この距離で当てるの!」
「無理でもやれ!」
「ほんっとにゲームになるといつもこうなんだから・・・」
和佳はデータに記された位置をスコープで
和佳は孝徳の情報取得の正確さに驚くとともに、照準をその小さい敵に合わせる。
一般的にFPSの中では風の動きや、弾丸の重力により弾道が放物線状を描くことまでは再現されていないのだが、なぜかこのゲームではそこまで丁寧に再現されている。
「2キロ先の敵に当てるには・・・今・・・風速が南北にかけて7ノット・・・大体、
和佳は持ち前の数学力と知識で最適な弾道を
スコープから見える位置を調節しながら、最適の場所に銃口を向ける。
「ここだわ・・・」
和佳は算出した後、マウスの左クリックを押そうとするが、人差し指が寸前で止まる。
もし外せば、こちらの位置が割れてしまう可能性がある。そうなった場合、打ち返されるのは
「γ4、狙撃まだか!?」
菱田からの声がヘッドホンに響く。
「俺が前線に出るためにはその地点を通るしかないんだ。早く撃ってくれ!」
なんとも身勝手な。
だが、それは仕方がないこととも言える。
他の
「今やってる・・・もうちょっと待って」
菱田から「わかった」と一言飛ぶ。
和佳はそれに対して一つ息を吐くと、照準を定め、もう一度左クリックしようとする。
「ええい!ままよ!」
覚悟を決め、左クリック。放たれた弾丸は計算通り、敵
はずだった。
敵狙撃手は
「嘘!?なんで!?」
敵狙撃手は、この付近に敵がいないことで、場所の移動を行おうとしていたのだ。その動作の一環で頭部を動かし、運良くも弾丸を避けたという
敵狙撃手は、自身の後方に空いた弾痕をチラリと見たのち、γ4の方を向く。
「・・・ッ・・・!」
スコープ越しではない、肉眼で捉えたように向き続ける。
和佳は敵狙撃手のその動作に恐れ
しかし、すぐさま気を取り直し、慌ててボルトを引き、次弾装填の動作に移った。
その一時の間の内に、γ4の持つライフルスコープが割られる。
「この一瞬のうちに、どうして!?」
和佳がかけた時間よりも何倍も早く、弾道を換算し、狙撃を行なってきた。
この狙撃手は、この画面の向こうにいる人間は間違いなく和佳の何倍も腕の立つ狙撃手だ。
和佳の脳内が真っ白になる。
このままでは、次で仕留められる。
そう脳が危険信号を発する。これはただのゲームであるが、脳はまるで彼女が戦場にいるかの如く。
ここで和佳が最もするべき行動は、γ4を後退させ、敵狙撃手の射線から外れることだった。
だが、パニック状態になった彼女はそこまで頭が回らない。
『無理でもやれ!』
孝徳の声がいきなりフラッシュバックするように脳内で再生される。
和佳はその一言を思い出したことで、自身がやるべき最善の選択を見失い、γ4を前進させた。
スコープのないその狙撃銃で、2000ヤード先の小さな点のような敵を
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