第28話 不思議③
《小嵐様に対するお詫びとお礼について。おるれうすちゃん1号バージョンすりぃ~!より》
僕のスマホに突如として現れた、ダンジョンの管理人からのメッセージ。西園寺さんと美咲さんも突然の出来事に固まっている中、管理人のメッセージは続く。
《この度は試練のゴブリンを駆除していただきありがとうございました。また、こちらの不手際により危機に瀕してしまったことを深くお詫び申し上げます》
「なに……これ?」
「ヒイロ、いつの間に管理人と連絡交換したの!?」
「い、いや!僕もいきなりのことで混乱してて!」
あーしもまだなのにぃ、と違う方面で凹んでる美咲さん。いや、連絡の交換云々に順番とか関係ある?
一方西園寺さんは顎に手を添えて、メッセージの真偽について考えている。
「……本当に、管理人なのでしょうか?」
「うーん、僕の連絡先を知ってる人って家族と片岡さんしかいないので、その中で管理人の名前を知っているとなると……片岡さん?」
『私か?私は何もしてないぞ。何かあったのか?』
ダンジョンの外に居る片岡さんが僕の言葉に反応する。僕は事情を説明すると片岡さんも色々と可能性を追い始めた。
『ハッキング?いや、小嵐君のスマホをハッキングするにしては目的が分からなさすぎる……小嵐君、こちらからメッセージを送ったりは出来ないだろうか?』
「い、一応出来ますけど何を送りましょうか?」
『そうだな……ベタな質問だが、どうやって連絡先を知った?とかだろうか』
えっと、どうやって連絡先を知りましたか?っと。家族以外にメッセージを送ったこと無いからちょっとドキドキするんだけど!え、みんなこんなメッセージが返ってくるまでの間に感じるドキドキを毎回味わってるの?死ぬよ!?
《小嵐様がダンジョンに脱出するときに私が補足いたしまして、小嵐様に存在する魔力を私が把握できるようにマーキングしておりました》
うん、1個の疑問を解消しようとしたら疑問が3つに増えて返ってきたよ?魔力って何?マーキングって!?というかダンジョンで僕のこと見てたの!?
待って待って、頭が混乱する。色々新情報が出過ぎて僕の頭じゃ整理しきれない……側に居た美咲さんも西園寺さんも首をひねっていた。
「ど、どういう事なんでしょうか……これ」
「日本語なのに理解できないよあーし……」
「わ、私も理解が追いついていません……魔力?マーキング?」
僕たちの混乱を余所に、管理人は次々とメッセージを送ってくる。
《さて、この度小嵐様に試練様のゴブリンの駆除を私の代わりにしてくださったことに大変感謝しております》
《また、今回のダンジョン側の不手際で小嵐様に多大な迷惑をかけてしまいましたことを深く
《ウォーターボール……水魔法の初期にあたる魔法ですが、威力はゴブリンを圧倒するほどの強さがあります。これからのダンジョン攻略にお役立てください》
いやいやいや……管理人のメッセージ1文ごとに疑問が増えていくから困るんだけど。魔法を付与?僕ついに魔法使いになっちゃったの?まだ30歳になってないよ僕!?
「魔法を、付与?」
「ヒイロ魔法使いになっちゃったってこと?」
美咲さん、その言葉は地味に刺さるのでちょっと……僕はメッセージアプリをバックグラウンドに待機させ、ステータス画面を開く。そこには、
――――――――――――
名前:小嵐緋色
Lv.1
HP:30
MP:6
STR:G12
VIT:G12
DEX:G6
AGI:G15
INT:G10
《スキル》
・水魔法Lv.1
《称号》
・『オルレウスの資格者』
――――――――――――
今まで空欄だったスキル欄に『水魔法Lv.1』の表記が新たに存在していた。
「水魔法……」
《ウォーターボールは水球を手のひらから撃ち出す魔法です。心の中で『使用する』と念じることで魔法の発動は出来ますのでご安心ください》
僕が呆気にとられているとまた管理人からのメッセージが。えっと、取りあえず分かってることを整理しよう……僕がゴブリンを倒さないといけなくなったのはダンジョン側の不手際で、僕はそのお詫びとして水魔法とやらのスキルを得た。
その水魔法とやらは脳内で使うと念じれば発動できて、手のひらから水球を撃ち出す魔法でその威力はゴブリンを圧倒できる……と。
うん、僕がオタクじゃなかったらここまですんなり理解できないよ!?普通の人は魔力ってなんぞやって所から説明しないといけないんだからね!?
あと普通の高校生にゴブリンを圧倒できる程の武器をホイホイ持たせないで?危なくてしょうが無いじゃん!どうするんだよ夢にゴブリン出てきて水魔法うっかり出ちゃったら!?
「な、なんというか……おめでとう、ございます?」
「ヒイロが強くなったんならまぁ、良いんじゃない?」
横から僕のステータス画面を覗いてた西園寺さんと美咲さんも混乱しつつも現状を理解したようだ。
というか……頭がパニック状態になっていたけど、時間が経ち冷静になるとこの場でスマホの画面を見続けているという状況そのものが危険であることに気がつく。
「流石にこれ以上スマホに気を取られていると危ないかもしれません」
「はっ!そ、そうですね。小嵐さんの言うとおりです」
「いつまでもここにいたら危ないもんね!早く帰ろっ、ね?」
僕はスマホをポケットに入れて慌てて来た道を引き返す。ピロンピロンポケットから流れてくるけどごめん!今は返事を返すことよりもダンジョンを脱出する方が先!
僕たちは遺品の入った袋を握りしめて足早に駆ける。ちゃんと底が擦れて落ちないように両手持ちだ。
いやピロンピロン止まらないんだけど!?メンヘラ?これが俗に言うメンヘラなの!?怖い怖い怖い!僕は半分パニックになりながらダンジョンを脱出したのだった……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます