第18話炎の剣

「誰かいませんかー?」

森林の中を捜索して回る。

ここで人が戦っていた痕跡はあるのだが、そこに人影らしきものは見当たらない。

くまなく周囲を探し回ると、廃屋らしきものを見つけた。

「誰かそこにいませんかー? 応援にきたものです」

僕は力いっぱい声を出した。

廃屋から数人ほどが出てきた。

「ああ、助かった。ここに隠れてて正解だったようだ」

一人がそういう。

「全員無事ですか?」

「ああ、怪我人や負傷者はいるが全員生きてるよ」

「良かった。それで父さん・・・、いえレオン団長はどこにいますか?」

「それがその・・・、レオン団長は一人でトロールを倒しに行ったのを最後に姿を見ていなんだ」

「え・・・。どこに向かったか分かりますか?」

「確か西の方角へ向かったはずだ」


「ありがとうございます」

僕は一目散に言われた方角へと走り出した。

「ちょっと、俺たちはどうしたら?」

困惑した一人に聞かれる。

「大丈夫です。周囲にもう魔物はいないので応援に来た人と合流してください」

僕はそれだけ言い残して父さんの方へと向かった。

森林を西へと駆け抜ける。

父さんどうか無事でいてくれ!



そろそろ日も落ちる時間が迫ってきていた。

周囲は暗くなっていく。

僕は持ってきたリュックの中から松明を取り出し、それにマッチで火を付けた。

その松明の明かりを頼りに進む。

母さんとクレア、他の人もさっきの人たちから事情を聞いたはずだ。

今頃きっと僕と同じ方角を進んでいることだろう。

とにかく一心不乱に走る。

森林はとうに通り過ぎていた。

道なき道を進む。

ウウッーーー!

突然、人のものではない声が周囲から聞こえてきた。

もしかして、これトロールの声じゃないか?

その声のあった方向へと向かう。

そこで誰かが一人で呟く声が聞こえてきた。

「クソっ、この俺がこいつらトロール相手に不覚を取るとはな・・・。動きはのろまなのに馬鹿力だけはいっちょ前に持ってやがる」

その声のあった方を松明で照らす。

トロール数匹と交戦している父さんがそこにいたのだった。

左の肩を負傷しているらしくそこから血が出ていた。

「父さん!」

アレンの方を振り返る父さん。

「アレン!」

「はっ! 危ない避けろ!」

「え?」

背後にいたトロールからこん棒がアレンに振り降ろされようとしていた。

レオンは咄嗟にアレンを付き飛ばし庇う。

ドドーン。

こん棒が地面を叩きつけた。

「アレン無事か?」

「僕は大丈夫です。それよりも父さんの足が・・・」

父さんの足がこん棒の下敷きになってしまっていた。

これでは動けそうにない。

「これくらい大丈夫だ・・・。それよりお前はここから早く逃げろ」

「そんな、父さんを置いて逃げるなんて嫌です!」

「いいから、お前だけでも早く逃げるんだ」

トロールがすぐそこまで迫ってくる。

アレンは立ち上がり剣を握る。

「何をするつもりだ!? 早く逃げろ!」

「決まってるでしょ。トロールを倒すんです!」

その言葉に答えるかのようにアレンの剣が怪しく光った。

周囲に転がり落ちていた松明。

その松明の炎が剣へと向かって伸びている。

剣をその炎が纏い始めた。

炎が纏った剣。

僕はその剣を両手で重く振り降ろした。

周囲に炎の斬撃が飛んだ。

数匹いたトロールは、その炎の斬撃で一刀両断され、ものの見事に焼きつくされた。

「一体何がどうなってんだ・・・」

困惑した父さんの声。

アレンは、力を使い果たしその場で気絶し崩れ落ちた。

「おい、アレン大丈夫か!? 返事してくれ!」

レオンは必死にアレンを呼びかける。

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