第17話魔物との初戦

「今回の応援部隊の指揮を取ることになった副団長のフーリ・マッケランだ。作戦はレオン団長及びギルドの者たちを救助しつつ、魔物の大群を各個撃破し殲滅していくのが今回の作戦の全体像だ。魔物の概要は報告によれとトロール推定40匹、ゴブリン数100匹、ダイアウルフ数100匹とのことだ。ここまでで何か聞きたいことがある者はいるか?」

シーン。

「なければ今回の作戦は急を要する故、準備出来たものから順に出発しろ」

「おおー!」

武装した数10人の集団が馬にまたがり、傭兵ギルド館を後にしていく。

その後ろをアレン、アン、クレアの3人とシグレを合わせた4人が馬に乗りながら後につく。

「本当にクレアまで来なくても良かったんだぞ」

「くどいわよアレン。私だって自分の魔法の力で人を助けることがしたいからここにいるに決まってるじゃない。それに私もいずれはこういう経験をすることだってあるはずだわ。それが遅いか早いかの違いでしかないわ」

そう、この世界で生きるということはすなわちこの世界の脅威と戦うこと。

まさしく父さんが言っていた通りのことが今起きている。

「こんなことになってしまって本当に申し訳ない。私だけむざむざと逃げ帰るようなことになってしまって・・・」

シグレさんが顔をうつむきながらそういう。

「あなたがそれで自分を攻める必要はないわ。あなたはこうして私の夫の窮地を報せに来てくれた。それだけであなたは充分な働きをしてくれたわ」

母さんはなんてことはないといった様子でそういう。

「かたじけない」

シグレさんがまるでサムライ口調でいった。

もしかしたらシグレさんはこの世界でいうところの日本っぽい感じ?のところの人ではと思えた。

身なりもどことなく和装っぽい気がする。

腰に刀っぽいもの持っているし。

そんなことを考えていると横から母さんに話しかけられた。

「そうだアレン。これをあなたに渡しておくわね」

それは虹色をした宝石の装飾が施されたロングソードであった。

「これを僕に?」

「ええ。あなたにあげるわ。これは剣であり魔道具の亜種でもあるものなの。この剣は魔法の力をまとって使うことが出来るものよ。今のアレンにならきっと上手く使いこなせるはずよ」

「ありがとうございます。大事に使わせて貰います」

なんかとても高価そうなものをいただいてしまった。

せっかく貰ったものはありがたく大事に使わせてもらおう。

魔道具の亜種ということはこの宝石のようなものがきっとマナクリスタルなのだろう。

母さんは魔法をまとって使える剣と言っていた。

だが、その使い方はまだ分からない。

使い方は実践で身に着けていくほうが良さそうだ。

最悪ただの剣として使ってもいいかな。

今はとにかくこの剣を上手く使って父さんたちを助けなくては。

それから僕たち応援部隊はギルドのある町から3~4時間ほど北へと進んだ。

その先の森林でゴブリン数100匹ほどとダイアウルフ数100匹と思われる魔物に遭遇した。

その場にいた全員が戦いやすいように馬から一度下りる。

「ここで迎え討つぞ。皆剣を構えて突撃せよ!」

副団長のフーリが端を発した。

「おおおー」

ギルドの者たちが突撃していく。

シグレさんもそれに続いていった。

だがもはやその必要はなかったようだ。

母さんが水筒を取り出しその中の水を魔法でブーメラン状に形作ると、それを猛スピードで飛ばし水の斬撃を魔物に食らわせていく。

おそらく予め水にルーン文字を使って術を刻んでおいたのだろう。

その水のブーメランは縦横無尽に飛び回り魔物たちを無残に殺していった。

クレアの方はといえば魔法で土の拳を形作り、それを魔物にぶつけて攻撃している。

その場にいた者たちが呆気に取られる。

「本当にこれが魔法の戦い方なのか?」

信じられないといった様子で皆が口々に発する。

僕はといえば先ほど貰ったロングソードを構えて切り込んでいった。

魔物相手に戦うのはこれが始めてであったが不思議と恐怖は感じなかった。

きっと父さんを助けたい一心で無我夢中だったからであろう。

手あたり次第に魔物を切り殺す。

あれ? 

思ったよりも魔物が弱い。

こんな魔物よりも父さんの方が何倍も強いわー!

どうやら僕は毎日のように父さんと剣の鍛錬をしていたおかげで、小物の魔物くらいなら余裕で相手出来るみたいだ。

それだけ父さんが強すぎるという現れだろう。

僕と母さんとクレアの3人はあっという間に魔物たちを蹴散らしていった。

あとに残ったのは敷き詰められた魔物の屍と血の臭いが漂うだけ。

「ふう。終わったー」

僕は額の汗を拭う。

「お疲れ様アレン。これ使っていいわよ」

母さんからハンカチを渡された。

「あ、ありがとうございます母さん」

僕は渡されたハンカチで汗を拭いた。

「ねえねえ。私の魔法ちゃんと見てたアレン?」

クレアが自慢気に聞いてきた。

「ごめんなさいクレア姉さん。魔物を倒す事に集中していて見ていませんでした」

「なによもう。せっかく私が活躍するところを見せれるチャンスだったのに」

不貞腐れるクレア。

「それはすみません」

その様子をギルドの者たちがじっと見つめている。

そして心の中で誰もがこう思ったに違いない。

もうこの3人だけでいいんじゃね?

と、思ったことだろう。

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