神崎さんと千葉君(笑)

「私のどこが好き?」

放課後の教室。

神崎さんは、俺に正面切って聞いてきた。

俺は自分の席で読書をしていただけなのだが。

前の席の神崎さんが、突然謎の問いかけをしてきた。

「神崎さん。僕ら付き合ってもいなければ、告白した覚えも無いのに、なぜそんな質問をするんだい?しかも、若干大きめな声で。

おかげで、他の人達がザワめいているよ。」

俺は普通の口調で、神崎さんに言った。

「やっだなぁ!もう!そんな事を私の口から言わせるの?千葉くん!」

神崎さんはテレながら言い放った。

「いや、まずは会話を成立させようか。

メガネをクイッと上げながら俺は言った。

「だって、私の席の後ろにいるじゃない!」

「先生が決めた席順だからね。」

「授業中、いつも熱い視線を背中に感じてるんだよ!」

「安心してくれ。君を素通りして黒板に熱視線を送っているから。」

「プリントだって、いつも私からもらいたがってるし!」

「席順のルートだと、君からしか受け取れないからね。」

「もう!いい加減にしてよ!」

「そのセリフは俺が発するべきだよね。」

「私の全てを弄んでいたのね!」

「そのセリフを大きな声で言った事によって、他の人達のザワめきがドヨめき変わったよ。」

「じゃあ私の事、嫌いなのね!」

「好きだよ。」

普通に答える俺。

「え!」

驚きの表情の神崎さん。

「え!」

ドヨめいてた他の人達も同じ表情をしている。

「な、な、な……千葉君のオタンコナーース!」

顔から炎を出して、神崎さんは教室から出て行った。

ここ最近、やたら絡んでくる神崎さんが何となく気にはなっていたが、恋だと気づいたのは今のやり取りをしていてだ。

神崎さんとのやり取りは嫌いじゃないし、むしろ楽しく思っていたが、俺はどうやら初めて恋をしてしまったようだ。

と思いつつ、クールにメガネをクイっと上げた。

他の人の注目を浴びながら、俺は教室を出た。

すると、神崎さんがドアの横にいた。

「さっき言ってたこと………ほ、本当なの?…」

俯きながら顔を真っ赤にして言う神崎さんに

「本当だが、何か不都合でも?」

俺はメガネをキランと輝かせ言い放つ。

ボウッ 再び神崎さんは顔から炎を出し

「私だって好きよ!ばかーーーーー!」

そう言って、ものすごい速度で彼方に走り去った。

俺は神崎さんのセリフに自分がドキドキしているのを感じた。

「これが恋か…」

メガネをクイッと上げ歩き出した。

恋愛というのは面白いものだ。

クールを保ってはいるが、明らかにいつもの自分の感情とは違っている。

下駄箱で靴を履き替えると、神崎さんが立っていた。

「本当に!本当に!本当なのね!?」

神崎さんは叫んだ。

「本当だ。なんなら納得いくまで、好きだと言い続けることもできるぞ。」

俺はメガネをクイッと上げる。

「う〜〜…嬉しいわよ!」

神崎さんは、そう叫んで全身から炎を出し走り出した。

しかし、足には自信のある俺はスタートダッシュで神崎さんと並走した。

「にゃああああ!?」

顔を赤くしながら全力ダッシュ中の神崎さんは、真横で並走している俺に驚いたようだ。

「安心してくれ。どんなにスピードを上げても、並走を続ける自信がある。」

俺はそう言ってメガネを光らせた。

「ばかあぁぁぁ!」

スピードを上げた神崎さんに、ピッタリと並走する俺。

あぁ、他から見ると仲良しなカップルに見えるのだろうな。

俺達は、夕日を背に全力疾走していた。

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