告白(普)
夕日が差し込む放課後の教室。
蓮見清香が立っている。
俺は今日、告白をするため蓮見さんに残ってもらった。
長く綺麗な黒髪が風に靡いて、美しく見える。
そんな蓮見さんを見て、俺の心臓は爆発寸前なくらいドキドキしていた。
「話って何かしら。」
静かに蓮見さんが言う。
美しい容姿とクールさが近寄りがたくさせているのか、蓮見さんはクラスで1人でいることがほとんどだ。
俺は彼女の笑顔すら見たことがない。
それくらい感情を表に出さない人だった。
「あ、えっと…実は…」
俺は焦りながらも、意を決し言葉を続けた。
「好きです!付き合ってください!」
彼女の目を見て、正面から告白した。
「どうしてそんな気持ち悪いことを言うの。」
彼女は表情を変えず、冷静な口調でそう言い放った。
『えー!お断りされる前に酷いこと言われた気がするー!』
思わず心の中で叫んでしまった。
良いにしろダメにしろ、告白されたことに少しでもリアクションがあるかと思ったが、ノーリアクション全開だ。
「えっと…、つまり、俺の事、嫌い…ってことかな?」
恐る恐る聞く俺。
「そんな事言ってないでしょ。ただ、あなたが漆黒のオーラを纏いながら、そんな事を言い出すから、てっきりストーカー宣言をしているものかと思ったのよ。」
やはり冷静に、淡々と話す蓮見さん。
『オーラ纏ってんなら、青春の淡い感じの色かと思ったけど、漆黒なのか!
てか、ストレートな告白がなぜストーカー宣言に変換されたの?』
心の中で俺はツッコんだ。
「前川君は、サッカー部の部長、クラスの人気者で学年トップの成績というのは知っているわ。そして下校時に、老人に優しく接しているとこもよく見かけたし、心優しい人だと思っているわよ。」
『俺の事、結構知ってくれてる!これはもしや……』
「じゃあ、付き合ってくれるの?」
「イヤよ。」
『ぐはっ』
即答で一刀両断!
「だって、私達ろくに話もしたことないのに、いきなりの『付き合おう』というのは、おかしくはないかしら?」
冷静に淡々と話す蓮見さん。
「!っ、…確かにそうだよね。お互いの事あまり知らないのに…いきなりすぎるよね。」
俺は確かに蓮見さんの言う通りだと思った。
「じゃあ、友達からお願いします!」
「お断りよ。」
『げふっ』
即答でお断りされた。
「友達って、お願いされてなるものじゃないと思うわ。」
『確かに…。最もな返答だ…』
「そうだよね。じゃあ明日から挨拶したり、徐々に仲良くなれるようにするよ。」
「まっぴらごめんよ!」
「まっぴら⁉Σ(゚Д゚)」
聞き慣れない拒絶の言葉に、思わず声を出してしまった。
「だって、今過ごしたこの時間で、私達もう友達でしょ。」
そう言って蓮見さんは、少し笑顔を見せた。
その美しい笑顔を見て、俺はやっぱり蓮見さんのことが好きなんだと再確認した。
「さあ、帰りましょう。確か帰る方向一緒よね。」
「え?俺んちの方向も知ってるの?」
「友達だもの。当然でしょ。」
『いや、友達になったのさっきだし。』
「……もしかして、前から俺の事、気にしてた?」
「……早く帰りましょう。」
蓮見さんは、そう言って俺に背中を見せ、教室を出ようとした。
チラッと見えた蓮見さんの横顔が頬を赤く染めていたことは、内緒にしておこう。
俺のハートは、嬉しさで溢れてるから。
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