MEITØ戦線-十ジに成敗されて
『⚠残酷な表現が含まれます』
そこは、
ボンタンと長ランの
山軋の右隣を歩いている遠坂は、山軋を二度見、そして三度見までする。
「うぅ……朝から騒がしいですね
山軋さん、これは一体なんですか?? 」
「ん??
学年のツッパってるヤツ全員シめたら……
なんかこうなってた」
そして二人は各教室で、一時間目の授業。
数字の方程式が、山軋を悩ます。
黒板に数式を書いてみれば全問不正解。
そうして、方程式に悩まされてから数分が経過し、教室に響く
「え……」
男がいる。
窓にへばりついている。
ここは三階だ。
窓には無数の手垢。
生活感がないボロボロな格好、伸びるだけ伸びて乱れた髪、今もニタニタ笑いながらクラスを見ている。
全身に寒気と、追いつかない理解。
故に一秒がスローモーション。
「は……ッ??
……お、オマエら逃げろォ!!
こいつ狂ってる……ここ三階だぞ?! 」
山軋は絶対戦術を起動し、その純黒な
銃口から一直線、人を突倒すほどの暴風54m/sが男を捉える。
窓ガラスが割れる。
刹那、男は爆撃を
男は紛れもない能力者だ。
黒煙に曇らされた教室は視界不良、そして爆撃と暴風の影響で、山軋はドア側へと突き飛ばされてしまい背中を強打。
「こいつッ……強ぇ!! 」
山軋が床に手をつけば『ピチャッ……』と手が沈んでしまうほどの暖かい血の湖。
右側を見れば死体、左側を見ても死体、先程まで喋り合っていた友人達は、爆撃からのガラスの破片による二次被害で
教室内は、燃えて
すると、命を感じない肉を盾に、山軋は男へと突進する。
「さすがは制圧の職員だなぁ
一撃では死んでくれないみたいだネ
でも……ん?? 」
盾に用いた死体を男の方へと投げれば、山軋は二つ目の絶対戦術を起動し、展開する。
その戦闘方法は、定まらない照準の果てに生まれた副産物――――暴れる風の暴風戦線。
前方から発砲、吹き付ける風はまるで壁、故に男は腕を上げられない。
「風が……!!
う、腕が上げられねぇ!!
このクソ野郎ォ絶てぇぶっ殺すからなァ!! 」
「せいぜい
これで終わらせてやる
待て、
そのとき、男は不敵な笑みを浮かべる。
男が
教室で焼け死んだ三十名が、まるで滑り台のように真下の二階へ落ちていく。
現在生徒が残っているであろう二階のクラスから、コンクリートを砕く音に混じりながら、骨と筋肉を一気に潰すときの『ゴリュッ』と『グチュッ』が合わさる音まで聞こえる。
しかし、悲鳴を発する余裕もなかったのか、秒が経つ前に息を引取ったのか、一切悲鳴は聞こえない。
男はニヤリと笑うと、三階の砕けた壁から飛び降りながら、グラウンドに避難している生徒に向けて爆撃を二発そして三発。
「ふざけんな……ッざけんなよッ!!
オレを見ろや!!
こっち来いやァ!! 」
その後、山軋は男を呼び止める。
そして、屋上へ向かって走り出す。
窓から飛び降りた男は、山軋を追うように走り出す。
「いい度胸じゃねぇか能力者
さァ……ここでオレとタイマン張ろうぜ??
人殺しの罪は償えよ……能力者!! 」
「能力者って呼ばれるの気に食わんなぁ
俺は
商店街の件と、八億の件、きっちり返して貰うから覚悟しろよ?? 」
――――
移ろう時代に、不動の世間体。
正義の制圧に、命を賭ける24/7。
八億強奪事件以来、仕事を振り分けて貰えない利刃にとって、女性職員を視線で護衛することが業務になりつつある頃、新聞紙の穴を通じて女性職員と目が合う。
「き、今日も一段と美s……」
新聞紙の穴の先から、女性職員は鋭い前蹴り。
ハイヒールのつま先で利刃を黙らせる。
「もう一発ほしいか?? 」
「い、いえ……お腹いっぱいです
ご馳走様でした……」
「はぁ……このセクハラ隊長がッ」
そのとき、帰還した職員の一人が、班長席に座っている六刀へ話しかけに行く。
六刀は班長席を立ち上がる。
「なにッ?!
で、貴方達はどういった対応を?? 」
「私達が向かった頃にはもう……正面切って入れる状態じゃありませんでした!! 」
「ありませんでした、じゃないだろ!!
この大バカ野郎ォ!!
何でもいいから正面切って制圧してくのが第一課じゃねぇのかよ!? 」
「申し訳ありません!! 」
港署の五階にある第一課で、六刀は窓を開けると西方面――――七武学院を
絶えず爆発と暴風がぶつかる様子と、聞こえてくる止まない騒音が、普段以上の異常さを知らせる。
すると、利刃は頬を抑えて救急箱をあけながら、六刀に話しかける。
「六刀班長、ちょっとオレ屋上行ってるんで、何かあれば電話ください」
「屋上ですか??
わ……かりました、何かあれば電話しますね」
「じゃ、行ってきます」
利刃は、昼間でも薄暗い階段を上がると、錆びたドアを蹴飛ばして、視界良好な屋上にただ一人。
煙草に火をつけて煙を立ち上がらせると、くたびれた様子で、屋上の柵に
「山軋がこっち向いて絶対戦術を撃ってるッつーことは……能力者は、屋上の階段側か
爆撃の放つ位置が変わらねぇってことは、相手は移動してねぇな
ふーん
2kmってとこか」
――――
七武学院の屋上。
屋上の階段側を背に、男は爆撃を放ち続ける。
山軋は暴風の壁で
そして、相殺が続く現状に、山軋は息を切らす。
「疲れてきたのか制圧職員さぁん??
まぁ次の一撃で、楽に死なせてやるよォ
ッ?!
……ぁガッ」
男が喋り終える刹那の出来事。
赤黒い
男は即死。
山軋の頬を1mmだけ掠めて、斬撃は消える。
利刃の絶対戦術『
「丁度十時か……」
港署の屋上で、利刃はそう呟きながら、階段を下りていく。
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