三億横領事件
立体駐車場に停めた
「一人で行くのは渋いぜ利刃」
助手席側のドアを開けたのは、第一課の利刃隊に所属している
大柄な体格、気怠い態度、そして肩まで伸びた長髪を
「いまの時代、セクハラだのパワハラだの、肩身が狭くなったな……なァ利刃
異動の件は仕方ないさ
山軋も遠坂も異動の関係で、そこの中高一貫学校の転入手続きに行ったからよ
今回は俺達だけで任務遂行だな」
「そうだな」
整威は、車の助手席に乗込むと、ナビ画面の下にあるシガーライターで、タール11mmの
そして、
足を組みながら強気な笑みで、さらに、煙草を噛みながら慣れた口調で、港署の第二課と第四課に事件調査を要請する。
「あぁどうも、一課の整威です
まァ……そうだね、指示したところに
第二課は第三地区の至るところに、可能な限りの検問を張ってください
第四課は、第三地区内で
見つけ次第報告願います
俺達はそこに向かいますから」
「ですが整威さん、一つ質問が……
何故、現金輸送車を含め、一般で走行する車まで検問するんです?? 」
「質問で返しますが、わざわざ分かりやすい現金輸送車で逃走し続けますかねぇ??
自分だったら別の車に乗り換えますよ
ですが一応……この考えが間違えてたら、自分は責任取れないので現金輸送車も注視願います」
「さすが整威さん……
承知致しました!!
早速実施致します!! 」
それから二人は、第二課と第四課からの連絡を待つだけとなり、連絡が来るまで車で待機を始める。
利刃は、運転席のシートを倒し、携帯画面を横にして映画を見ている。
それから映画の中盤シーン。お互いに片想いをする鈍感な男女は、カラオケBOXという密室で二人きり、ついにAの予感。
向き合う二人は瞳を見つめ、友達を恋人に変える五秒前、求める
「利刃隊各位!!
緊急連絡、整威さんの指示により、対象と思われる車両を発見!!
ナンバーは、明道302、C、
利刃隊の携帯にマップを送信させて頂きました
大至急、対応願います!! 」
第四課からの連絡が切れると、利刃は、映画のラストシーンに『Cはあるかな』なんて想像しながら立体駐車場を出る。
白煙を上げながらタイヤを鳴かせて急カーブを曲がると、法定速度の車と車を追い越して、まるで布を縫うように道路を駆け抜ける。
「おい利刃……あの黒いセダンじゃね?? 」
「間違いねぇな」
信号待ちの赤信号、停車中の怪しげなセダン車を警戒してみれば、ナンバーは
現在第一車線。
「ナイスだ、整威
そんじゃ、久々に
アクセルをベタ踏みで追跡。
メーターが法定速度から60kmオーバー。
寂れた工場と倉庫が、この先500m以上も続いている一般道で、排気音を響かせながら
距離を詰めても離されて、延々と続く
そのとき、前方を走るセダンの後部座席から、男が顔を出す――――手には拳銃。
一発、二発、と撃ってきている。
利刃は右に左にハンドルを切って回避。
「えぇ銃持ってんのかよ……
制圧対象確定だな」
すると整威は、絶対戦術を起動する。
出刃包丁のような
利刃が運転する覆面車両は、
そのスピードのままハンドルを逆向きに切り、サイドブレーキを引いて車体を右斜めにスライドさせると、整威は
「はい、逃走お疲れさま」
整威はニヤリと笑いながら、槍型の絶対戦術を振り上げる。
ギラついた滑らかな刃が天を向くとき、岩を巧妙に加工したような壁らしい壁が、道路のコンクリートを砕きながら前方100m先まで突き上がる。
逃走中のセダンは、突如出現した壁に押上げられ、横転して大破する。
「ナイスだ整威
そんじゃ車内を確かめますかァ」
利刃と整威は車から降りて、大破した車のドアを蹴り飛ばす。
すると、車内から出てきた現金収納用のアルミ製ケースが目に止まる。
ケースの中身が大量の札束であることを確認し、ケースを閉じると、利刃が――――
「コイツらが持ってたのは五億だ
八億強奪された内の三億は知らん」
整威は、周囲に防犯カメラが無いことを確認し、無言で
トランクに
そして、街中から逸れた木造建築の住宅街へと車を走らせる。
「人目の無い空地とかがいいね……こことか」
雑草が生い茂った空地を見つけると、そこの路肩に停車させ、利刃はトランクを開ける。
空地の隅に
「整威、ナイス!!
じゃあ、五億だけ港署に預けて……あとはパトロールに行くとか言っとくわ
数時間後に三億回収するぞ!! 」
「さすが利刃!!
よッ、アンタが大将!!
もうパチ屋に行かなくて済むぞォ!!
よし!!
戻りますかァ
我らの港署へ!! 」
二人は上機嫌で港署へと戻っていく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます