正義とは

 視界を白くにごす薄い霧。

 

 辺りに広がる浅い水面みなも

 

 水面に咲上さきあがるはすの花。

 

 美しい……と見惚みとれてしまう能力の空間が爆誕。 

 しかし、この能力を発動した佐藤さとうれんの、その眼差しには底知れぬ憎悪ぞうおにじみ出ている。 

 

 すると、佐藤は口を開いて――――

  

 

 

「これまで殺してしたボクの仲間より……

 

 ずっとボクの方が強いぞ

 

 おい!!

 制圧本部!!

 

 ボクと勝負しろ 

 オマエら制圧本部は……絶対に許さない」 

 

 

 

 佐藤の眉間にシワが寄る。

 

 そして、怒りとが、涙となって目からこぼれる。

 

 その原因は制圧本部。

 二年前――――当時中学生だった佐藤は、部活での功績、学業での評価、どちらとも得ており優秀で真面目な男子学生だった。

 男子からも女子からも人気があった佐藤だが、ある日突然、能力が発現してしまった。そのことをキッカケに、自身が『能力者だ』という噂が拡がった。

 友人からも家族からも見放され、人から暴力を振るわれるよになり、藁にもすがる思いで『街を守る立派な人』に助けを依頼した。

 

 これで助かった……そう安堵し――――

 

 そして、腕の骨は折れ、口から血を吐き、上手く呼吸すら出来ない状態で、佐藤はしながら途方にくれた。

 

 街を守る立派な人は、街の平和を守ったからだ。

 

  

 

「おいおい……

 

 佐藤くんだっけ??

 

 許せないのはこっちの方だよ

 

 オレたち制圧本部が何したってんだ??

 市民守ってるオレたちが、そんなに輝きすぎて気に食わねぇのか……」 

 

 

 

 利刃とばが、佐藤の言葉に対して反応する。

 

 きしは辺りを見回し、あごに指を当て、この能力に対抗出来る対策を考えている。

 

 

 すると―――― 

 

 

 

「……ガハッ!!」

 

 

 

 利刃が突然、口から血を吐いた。

 そしてせきが止まらず、呼吸は次第に苦しくなる。

 

 岸の状態は利刃と違い、ただ息苦しそうに呼吸が荒くなっている。

 

 商店街の客や住人、そして利刃の車を見張ってた利刃隊の二人、さらには救助に駆けつけた第二課の職員達も、この咳が止まらない現象におちいった。

 

 

 

「喋れば喋るほど……症状が悪化するんだよ、この能力は。

 

 制圧本部も大したことないね

 

 じゃあ……

 

 死ね!!」

 

 

 

 そのとき―――― 

 

 

 

暴風刑砲ぼうふうけいほう五域ファイブ

 

 

 

 商店街を抜けた先のオフィスビルから、人を張倒はりたおせるほどの威力をしたが、商店街一帯の高範囲を吹抜ける。

 

 一瞬の暴風が、

 

 そして利刃が一言述べる。

 

 

 

「……遅せぇよ……山軋やまぎしッ!!」

 

 

 

 利刃は、桃山武将ホーリー大太刀十文字ブレイドを強く握りしめ、歯を食いしばりながら再び一歩踏み出す。

 

 人々を脅かす能力者に、そして宿敵と言われるほど強い庭園に、一歩も引かない第一課の利刃は、まさしく街を守る立派な人。

 

 周囲の声援が、市民の信頼が、利刃を動かす。

 

 もう誰にも止められない。

 

 

 

「死ぬのは庭園テメェだろォがァァァ!!」 

 

 

 

 血がたぎるときに聞こえるノイズ。

 

 意地を見せていく明道めいとう制圧本部ポリス

 

 一歩も下がらず追跡チェイス選択チョイス

 

 これが制圧本部の魅惑的日常グロリアスデイズ

 

 利刃は、桃山武将ホーリー大太刀十文字ブレイドを振り上げながら佐藤の胴体を斬りつけ、そしてしめとして佐藤の腹部に刃を突き刺した。

 

 

 

「うぐッ……ァああ……ッ!!」 

 

 

 

 佐藤は、腹部から大量の血を垂らしながら、地面に倒れる。

 

 佐藤が流した血と涙は、能力者の主張として、制圧本部に届くことはなかった。

 

 

 

「似合ってるぜ……その様

 

 能力者のクセに……頭がたけぇんだよ」 

 

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