Don't stopドラマティック

 情熱的ロマンチックな星空に照らされても、モノクロの雰囲気が色せない懐旧的ノスタルジックな商店街。

 

 秒針が二つ三つ進むごとに、血溜まりで出来るくれない地面ベルベットは延びていく。

 

 血塗られた一本道で激戦。


 安全地帯とは程遠い前線。


 第一課の岸は、戦場の戦線を独占し、掌中しょうちゅう。 

 

 

 

「さっさと制圧ころされに来てくんねぇかなァ……

 

 暇で暇で仕方ねぇよ」

 

 

 

 第一課は武闘本格派。 

 

 存在をアピールするための表現方法は集団暴行。

 

 武力と横暴おうぼうの進行方向は、能力者に対して一方通行。  

 

 一般市民が犯罪に巻き込まれてからでは遅い、未然に防止しなければ『能力制圧本部』と名乗っている意味が無い。

 だから、戦闘部隊の第一課は無差別な制圧を行っているのだ。

 

 

 

「おい、オマエらー

 たった一人相手に情けないぞー??

 

 さっさと殺しなよ

 庭園の意地はこんなもんじゃないだろ??

 

 そうでもしねぇと……ボクが、に怒られちゃうんだよね」

 

 

 

 庭園の士気を上げるのは、特に冷酷無情れいこくむじょうな雰囲気があるリーダー格『佐藤さとうれん』。


 年齢は十五、学歴は中学中退、未だAキスすらしたことがない純粋な青少年だ。

 

 しかしその殺気立った視線は、まさしく悪党。

 

 そして佐藤は、仲間に『殺せ』と指示をする。

 

 

 

「死にやがれぇ!!

 

 制圧本部は庭園が終わらすッ!!」

 

 

 

 二人の能力者が走り出す。

 

 岸に仕掛けていくDeadデッド orオア Aliveアライブの真っ向勝負。

 

 岸との間合いが縮まっていく。

 手を伸ばせば触れられる距離まで、岸と能力者との間合いが詰まってきた刹那せつな――――岸は金槌かなづち型の絶対戦術を振るう。

 

 その速度、まるで

 

 音を置き去りにした渾身こんしんのフルスイングが、二人の顔面をえぐる。

 

 

 

「――――ッ!?」

 

 

 

「なんだ?!

 一体なにが起こった?!

 

 金槌かなづちを振るうが尋常じゃねぇ……ッ」

 

 

 

 絶対戦術ぜったいせんじゅつとは、能力者と対等に戦える武器。

 しかし、なにが対等なのか――――例えば、目には目を、歯には歯を、これを理論セオリーとするならば、絶対戦術は『能力には能力を』である。

 

 つまりした武器こそ、絶対戦術なのだ。

 

 

   

SPEEDスピードがオレの、絶対戦術の付属能力だ」

 

 

 

 その名は神詰致カナヅチ

  

 付属された能力は、絶対戦術『神詰致』を振るうスピードの上昇及び、動体視力と反射神経の向上。

 所持者に影響を与える絶対戦術だ。

 

 

 

「……まじかよ」

 

 

 

 とチートを見せられた二十八名の庭園は、後退りしながら困惑する。

 

 

 

「恋さんッ!!

 ここは一旦撤退しましょう

 

 でなければ――――」 

 

 

「数で叩け

 複数の能力を、アイツにぶつけてやれ」 

 

 

「……了解です」

 

 

 

 しかし、劣勢ながらも次から次へ、能力者は岸に攻撃を仕掛けていく。

 

 てのひらから延びていく炎。

 

 砂煙を巻上げて吹荒れる竜巻。

 

 身体を硬化して突っ込むタックル。

 

 地面をうならせ襲いかかるコンクリート。

 

 多種多様であり十人十色じゅうにんといろな能力が、岸に牙を向いている状況だ。

 

 

 

「なにもかもが……遅せぇんだよ」

 

 

 

 岸をはばんで立ち塞がるのは、意図的な天変地異。

 

 岸は、金槌『神詰致』で――――全力ハイパワー全速力ハイスピードが交わる最高峰で、襲いかかる天変地異を一つひとつ打ち砕いていく。

 まるで、カウントダウンのようなリズムとペースで、能力と能力者を粉砕していく。

 

 その時間、およそ三十秒。

 

 

 

「マジかよ

 

 い、いや……まだだッ!!

 

 金槌かなづち型の絶対戦術だろうが何だろうが……連射にァ敵わねぇよなァ?!」

 

 

 

 血走った目と、荒い息づかい。


 庭園の一人が、岸の前方10m先で、機関銃の引鉄トリガーに指を掛けて構える。

 

 単発射撃の対策しか持ち合わせていない岸は、微かに目を見開いて、逃げるか討つかを考える。

 

 迷いは命取り。

 

 岸は判断を間違えた。

 

 

 

「これで御終いだ 

 能力制圧本部ッ!!」 

 

 

 

 引鉄トリガーが引かれようと―――― 

 

 

 

「岸さん、しゃがめやァァ!!」

 


 

 増援のタイミングはいつも唐突。




桃山武将ホーリー大太刀十文字ブレイド

 

 一番目…… 

 十χクロス 御始末デッドエンドォォ!!』 

 


 

 斬撃が飛ぶ。


 斬撃が、しゃがんだ岸の頭上を通過する。


 血のように赤黒いの斬撃が、猛スピードで、ブレずに直線を描いて、機関銃を持った能力者と正面衝突クラッシュする。

 付近にいた能力者にも命中ヒットする。

 



「間に合ったか……」



「オマエ、来るの遅せぇだろ

 なに特攻隊長を時間稼ぎにつかッてんだよ」



主人公ヒーローは遅刻してナンボだろ」

 


 

 そう言って手を差伸べるのは、第一課所属のベテラン職員『利刃とば恭助きょうすけ』だ。


 利刃のガサツな挨拶とともに、利刃とば隊の三名も現場に到着する。

 



遠坂とおさか整威ととのい、オマエら二人は、オレの後続として立ち回れ


 オレの援護は、山軋……オマエに任せる


 あぁ、そんで岸さん……オレがいなきゃ、アンタ死んでたぜ??」



「そうだな

 おかげで命拾いしたぜ」




 そのとき、生き残った能力者の一人が、利刃に向けて拳銃を発砲し――――

 

 

 

「ッ!!」 

 

 

 

 真っ先に反応するのは岸。


 金槌の釘抜き部分にて、発砲された銃弾をキャッチする。

 

 

 

「ヒーローの利刃、だっけか??

 オマエも……オレがいなきゃ死んでたぜ??」

 

 

 

 

 

 

 

 

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