第25話 かぐや姫リターンズ
玉藻の前と雪女を連れて備前に戻った桃太郎。
「おかえり、桃太郎!」
「そ、その声は……」
桃太郎が家に入るとかぐや姫が居間でくつろいでいる。
「な、なぜお前がここに?」
「あ~、お母さまに頼んでもう一回地球に滞在する許可をもらったの。あの酸っぱい桃、コンポートにしたら美味しかったわ!」
「お、おう……」
「それからサル君、あの渋柿、干し柿にしてみたら最高だったわありがとう!」
「は、はい……」
「あと、犬! お前はぜってぇ潰すからな!」
「……」
「犬よ、お前はかぐや姫に何を渡したのだ?」
「はい、嚙みかけの骨を土産に渡しまして……」
かぐや姫は月の様子を映した動画をお土産に持ってきたと言い、月から持ってきたテレビとビデオデッキにテープをセットし、桃太郎たちに居間で観るように勧めてきた。
「私たちはお茶してくるから4人で見ていて!」
かぐや姫は玉藻の前と雪女を誘い、台所に向かうと、桃太郎たちは4人でビデオを見ることになった。
「おい、月なのに井戸が出てきたぞ」
4人が画像を見ていると、井戸から白い着物の女性が這い出てきて、テレビの画面から出てこようとする。
「旦那、かぐや姫に嵌められましたぜ! これは月の映像ではなく、かの有名な呪いのビデオです!」
「やばいぞ、犬、何か良い策はないか?」
「サル兄、キジ兄、あれを持ってきてください!」
サルとキジは戸棚に入れてあった食器用ラップフィルムを取ると、テレビ画面にグルグルと巻き付けた。
画面にラップフィルムを巻き付けられ、なかなかテレビから出られない白い着物の女、なんとかラップフィルムを突き破りで顔だけ出てきたところに、洗濯ばさみで鼻をつまんでいる桃太郎一行が白い着物の女の前にくさやの干物が入った瓶を置いてくる。
「お~えっ! くさっ! ちょっと、や、やめて!」
日本三大妖怪である玉藻の前でさえ耐えられなかったくさやの臭い、白い着物の女もあまりの臭さに耐え切れず、テレビから上半身だけ抜け出たところで気を失うのであった。
「今だ、キビ団子を喰わせろ!」
白い着物を着た女にキビ団子を食べさせることに成功した桃太郎はなんとか呪いのビデオの罠を逃れることができた。
「旦那、この女、既にハリウッドデビューしている有名人ですぜ!」
「え、そうなの? まあ、でも呪いが解けると意外と美人さんだったんだね」
白い着物の女は桃太郎たちに詫びを入れて、ビデオの中へと戻って行った。
「あれ、みんな月のビデオどうだった?」
かぐや姫がそろそろ4人とも白目をむいて倒れているかと思い、部屋を開けるが、4人とも平然としており、何とか呪いから逃れたことを悟る。
「ちっ、切りぬけやがったか、くそが!」
「か、かぐや姫、いまなんと?」
「なんでもないわ! また、みんなで旅とかしましょうね!」
笑顔で桃太郎に語りかけるかぐや姫であるが、その目は笑っておらず、犬の方をじっと見ている。
かぐや姫が月に帰る際に食べかけの骨を渡し、恨みを買っていた犬はかぐや姫に対し、恐怖を覚えるのであった。
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