第24話 雪女
「おい、犬よ、雪女って人間を一瞬で氷漬けにできるんだろ? 勝ち目なくね?」
「旦那、この戦術の奇才が何の対策もなく遠野に来たと思いますか? おいらがこの地に来た時点で勝敗は決しているんですよ!」
「いや、お前、前回、くさやの臭いで気絶してたじゃん……」
桃太郎は犬が慢心していることに危惧してはいたが、とりあえず、今回もその作戦に乗っかることにした。
「じゃあ、
桃太郎一行はいつもどおりに念入りなミーティングを行い、雪女をおびき出すため、山小屋に一晩泊まることにした。
そして夜も更け丑三つ時に差し掛かると、山小屋の扉が開き雪女が入ってくる。
「なんだコイツらは? 女狐とサル、キジ、犬は凍らせよう」
雪女は桃太郎以外のメンバーに冷たい息をかけ凍らせると、桃太郎の顔を覗き込み、若くてセクシーだったので見逃すことにした。
「なんだこのサムライ、胸元さらけ出して、顔もイケメンだし、山に連れて帰って夫にしてしまおうかね!」
雪女は桃太郎をさらおうと近づいた時、桃太郎にグッと腕を掴まれる。
「おい、こっち来いよ! 一緒に寝ようぜ!」
桃太郎に強く抱き寄せられ、遠野の山奥で若い男に飢えていた雪女は思わず、桃太郎に抱きしめられてしまった。
「今だ! みんな来い!」
桃太郎の掛け声と同時に扉から玉藻の前、サル、キジ、犬が山から連れてきた獣たちと一緒に山小屋に乗り込んできて、雪女に向かって押し競まんじゅうを始める。
「押し競まんじゅう押されて泣くな! 押し競まんじゅう押されて泣くな!」
冬の山小屋で獣たちが押し競まんじゅうを始めて、雪女を押しつぶす。
「暑い、お前たちは毛が多くて暑いから離れろ! あと、獣臭い!」
狭い山小屋は獣たちですし詰め状態になり、その熱気で雪女は目が回り始める。
冬なのに、山小屋の扉からは湯気が立ち、雪女はついにもふもふ軍団の暑さに耐えきれずに気絶してしまった。
「い、犬よ、や、やったな……」
雪女ほど暑さに弱くないにせよ、桃太郎も汗だくになり、壮絶な押し競まんじゅうで体力を奪われていた。
桃太郎はなんとか立ち上がり、押し競まんじゅうに参加してくれた獣たちに報酬を払い解散させると、雪女にキビ団子を食べさせ仲間にすることに成功した。
「仕方ないね、仲間になるわ! それにしても最初に凍らせた奴らはどうやって生き返ったの?」
「あ~、あれは右甚五郎さんという彫刻の名人に作ってもらった人形であの場で寝ていたのは俺だけだから!」
桃太郎一行は最初から桃太郎だけを囮にして、あとは甚五郎さんの職人芸で作られた仲間の彫刻を隣に寝かせていただけだった。
玉藻の前に続き、雪女も仲間にした桃太郎一行は以前同様に二人のヒロインを獲得し、備前に戻ることとなった。
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