第23話 玉藻の前白面金毛九尾の狐

 相模の国、武蔵の国を通過した桃太郎一行は下野の国に訪れた。


「桃太郎さん、ここに有名な玉藻前白面金毛九尾たまものまえはくめんきんもうきゅうびの狐がいるという話です」


 サルが地元の獣たちから集めた情報によると、玉藻の前は那須の地で殺生石に身を変え、近付く者を毒気で殺してしまうということであった。


「どうする? 毒気を放ってくるなら容易に近づけないぞ……」

「旦那、既に手は打ってあります!」


 いつものとおり、桃太郎一行は念入りなミーティングを行い、準備に取りかかる。


 殺生石の周りに七輪を並べた桃太郎一行は何かを焼き始め、団扇で扇ぎ煙を殺生石に送り始めた。


 三分くらい経った頃、殺生石から尻尾が九本ある貴族のような美女が嗚咽しながら現れる。


「オ~ェッ、何この臭いは? あなたち何を焼いているの?」


 あまりの悪臭に耐えかねた玉藻の前は殺生石から出てきてしまった。


「今だ捕まえろ!」


 桃太郎の掛け声で、サルとキジは玉藻の前に襲い掛かり、持っていた縄で縛り上げた。


「あれ、犬は?」

「犬の奴、鼻が利きすぎるんでくさやの臭いで気絶してます……」


 桃太郎たちが七輪で焼いていたのは相模の国で仕入れたくさやの干物で、その強烈な臭いで玉藻の前だけでなく、犬も気絶していた。


 桃太郎たちは玉藻の前にキビ団子を食べさせ、仲間にすることに成功する。


「まあ、わらわも長らくこの地に居て退屈していたところじゃ。お前を権力者にして堕落させるのもよかろう!」


「いや、その思考、犬とあまり変わらないから!」


 こうして玉藻の前は桃太郎たちと一緒に旅をすることになった。


「旦那、次は遂に雪女ですね!」


 しばらく気絶していた犬であったが、目を覚ますと、遠野に行くことを話してきた。


「次は雪女か。相手はメデューサちゃん並みのチートスキルがあるから、気を引き締めないとな!」


 桃太郎一行は円陣を組み、掛け声を上げると、遠野に向かって歩き出すのであった。

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