第20話 かぐや姫の帰還

 メデューサの破片を持ち帰り備前の自宅に戻った桃太郎一行。


 桃太郎はメデューサの破片の入った壺を戸棚にしまい、しばらく立ち直れないまま静かに暮らしていた。


「な~んか、ここも急に寂しくなっちゃったわね! ねぇ、桃太郎、あたしも次の満月の夜に月に帰ることになったの」

「え……」


 落ち込んでいた桃太郎であったが、かぐや姫帰還といういきなりの吉報に少し嬉しくなったが、悟られたら厄介なので、悲しいふりをした。


「姐さん、ずっといて欲しかった……」

「何よ犬君、また遊びに来るわよ!」


 犬も心にもない言葉で別れを惜しむ。


「なんか、月に持って帰れるお土産用意しなきゃ!」


 サルは箱いっぱいに渋柿を詰め、桃太郎は酸っぱい桃を同じく箱に詰めて、かぐや姫に土産として渡した。


 犬も何かを箱に詰めてかぐや姫に渡す。


 キジはというと、かぐや姫の報復を恐れて静観することにした。


 そして満月の夜……。


「じゃあ、かぐや姫、達者でな!」


 桃太郎たちに手を振られ、上機嫌で月に帰っていくかぐや姫。


「ところで、この箱の中は何かしら、あら、柿と桃か。一ついただいてみましょ!」


 かぐや姫は一緒に西洋を旅したことを思い出しながら、柿を食べてみると口中に渋みが蔓延する。


「ぺぇっ! ぺぇっ! 何よこれ! 渋柿じゃないの! あと、この桃、滅茶苦茶酸っぱいわ! あいつら!」


 だいぶ上空に上って行ったかぐや姫を見てホッとしていた桃太郎たちであったが、怒ったかぐや姫が上空から柿や桃を投げてくる。


「あ、危ない、あの高さから投げられたら柿や桃でも死ぬぞ、縁の下に避難しろ!」


 桃太郎たちは慌てて、縁の下に隠れ、かぐや姫が柿や桃を投げて来るのをやめるのを待った。


 しばらくするとかぐや姫の乗った船は完全に見えなくなり、柿や桃が降ってくることもなくなった。


「いや~危なかった。柿や桃に当たって死ぬとか、シャレにならん!」


 桃太郎とサルは顔を合わせホッとしていたが、犬だけは表情が曇っていた。


 月に戻ったかぐや姫は犬から渡されたお土産の箱を開けて激怒していた。


「何よこれ! 喰いかけの骨だらけじゃないの! あの犬、次に会ったら絶対に潰すわ!」


 以降、時折、赤みがかった満月が見えることがあり、そんな時はかぐや姫が激怒しているのだろうと言われ、赤い月が出る夜に犬は外に出なくなったということである。

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