第18話 メデューサちゃんが捕まる

 泉でずぶ濡れになってしまったメデューサを休ませるため宿屋に泊まることにした桃太郎一行。


 女神の泉でも呪いが解けなかったことで酷く落ち込むメデューサ。


「メデューサちゃん、大丈夫だよ、きっと呪いを解く方法は見つかるよ」

「桃太郎さん、もう大丈夫ですから。私の呪いのことは気にしないでください……」


 宿屋の食堂で話し合う桃太郎一行、しかし、重たい空気が張り詰める。


「ところで旦那、石化させた女神はどうするんですか……?」

「おい、犬、いまそれどころじゃないだろ? メデューサちゃんが大変な時につまらん話で割り込むな!」


 わりかし深刻な問題だと犬は思っていたが、犬以外のメンバーは女神を石化させたことをまったく気にしていない。


「ところでメデューサちゃんは何で怪物になる呪いなんてかけられたの?」

「はい、昔、海の神であるポセイドンの愛人になったらアテーナ―の怒りを買って醜い怪物にされてしまったのです」

「え、愛人……」


 桃太郎一行は少し重たい話に首を突っ込んでしまったと気づくが、とにかく呪いを解く方法を考えることにした。


 桃太郎一行があちこちの昔話から呪いを解く方法を探していると、宿屋に騎士団が入ってきた。


「おい、メデューサをかくまっているという桃太郎一行はお前たちか?」

「え、メデューサちゃんと一緒に旅をしてるけど、何かありましたか?」

「何かありましたかではない! 女神を石化させ逃亡したと通報が入っている。今すぐ、その女を引き渡せ!」


 騎士団はメデューサが女神を石化させ、逃亡したと泉を通りかかった村人から通報を受けており、メデューサを捕えに来たのだった。


「ちょっと待って! 確かにいろいろあって女神さまを石化させちゃったけど、狙ってやったわけではないんです! 直ぐに元に戻しますから!」


 桃太郎は必死に騎士団に訳を説明するが、聞く耳を持ってくれない。


「おい、メデューサ、大人しくついて来い! ペルセウス様もお前に用があると言っている」

「ペルセウス……」

 急にメデューサの顔色が曇る。


「桃太郎さん、私、行きます! 私が帰ってこない場合、日本に帰って待っていてください!」


 メデューサは目に涙をためながら桃太郎に微笑むと騎士団と一緒にペルセウスの元に向かうのであった。


「おい犬、ペルセウスって誰?」

「ちょっと待ってくださいね!」


 犬はカバンから世界の神話・昔話集を取り出し、ペルセウスについて調べる。


「桃太郎さん、ヤバいですよ! ペルセウスって大昔にメデューサさんを退治した神話上の英雄ですよ!」

「じゃあ、もう帰れないことをわかっていながら、日本で待っていてくれとか言って連れていかれたのか!」


 桃太郎はメデューサが桃太郎たちに迷惑をかけないように嘘をついて連れていかれたことに気づいた。


「あの子、本当にバカね! あたしは月の人間だから、地球の英雄なんて知ったこっちゃないわ! メデューサちゃんを助けに行くけど、あんたたちは昔話の英雄なんでしょ? ついて来なくてもいいわよ!」


 真っ先にかぐや姫がメデューサ救出に名乗りを上げる。


「おいらたちも元はただの森の獣、たまたま鬼退治に同行しただけで英雄ではないから、ついていきます! 桃太郎さんはどうします?」


 サル、キジ、犬もかぐや姫とともにメデューサ救出の意志を固める。


「まあ、俺も鬼退治したとはいえ、未だに映画化もされない二流ヒーローだからな! ここで一つ名を上げるか!」

「男ならそうこなくっちゃね!」


 桃太郎の男意気に感服したかぐや姫は持っていた扇子で桃太郎の頭を叩く。


「いや、だからそれ鉄扇てっせんだから!」


 桃太郎は頭に大きなたんこぶができるが、犬が持っていた手拭いで桃太郎の頭を冷やしてあげ、桃太郎、かぐや姫、サル、キジ、犬は円陣を組んだあと、メデューサを追いかけてアテネに向かうのであった。

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