第15話 オオカミ男

 白雪姫の元へ向かう桃太郎一行。


 一行はオオカミ男の縄張りと言われる森に入っていた。


「うん、そうなの。だから、よろしくね! じゃあ、またね」

「おい、かぐや姫、誰と話しているんだ?」

「あ~月にいるママと通信機で連絡取っていたの」

「月って進んでいるな……」


 桃太郎はかぐや姫の持つ通信機を見て、改めて科学力の差を感じる。


「ところでここってオオカミ男の縄張りなんでしょ? 今回は私とサル君、キジ君で対処するから桃太郎と犬君は大人しく見てて!」


 ここのところ、桃太郎と犬ばかりが目立ってしまい、活躍の場を欲したかぐや姫やサル、キジは3人でオオカミ男を退治することになった。


 桃太郎一行が森の中を進んでいくと、一人の中年男性が現れた。


「お前らが桃太郎一行か! この時を待っていたぞ! 今宵は満月、俺の真の実力でお前らを倒してやる!」

「やってみなさいよ! 真の実力、見せてごらんなさい!」


 オオカミ男に対して強気に出るかぐや姫。


「旦那、大丈夫ですかね? バトル漫画のやり取りみたいになってきてますよ……」

「かぐや姫のあのセリフ、バトル漫画なら大体負けフラグだよな……」


 桃太郎と犬は自信満々のかぐや姫を少し心配するが、オオカミ男はいつまで経っても人間の姿からオオカミ男本来の姿に変わらない。


「あらやだ、ちょっと毛深くなったところで変身は終わりかしら? こちらから攻めていいかしら?」

「ちょっ、ちょっと待ってくれ、あれ、何で少し毛深くなっただけでいつもみたいにオオカミ男になれないんだろう……」


 実はかぐや姫が月に住む母親に頼んで満月の光の力を弱めていたのであった。


「もう待ってられないわ! サル君、キジ君、例のモノを!」


 かぐや姫の号令に従い、サルとキジがオオカミ男の体の周りにガムテープをつけていく。


「おい、なんだ? なんでこんなもの貼っていく?」

「こうするためよ!」


 かぐや姫はオオカミ男に貼りつけられたガムテープを勢いよく剥がしていく。


「痛てぇ~!」


 中途半端に毛深くなっただけのオオカミ男に取って、ガムテープを剝がされるのは数十年前のメンズエステのような痛さであった。


「私の故郷の月の力を勝手に使ってんじゃないわよ! 使用料は体で払ってもらうわ!」


 かぐや姫はオオカミ男が勝手に月の力で強くなっていたことに憤慨しており、次々と体に貼りつけたガムテープを剥がしていく。


「痛い、やめて! もう、満月の力とか勝手に使いませんから!」


 必死に謝るオオカミ男であったが、最後はかぐや姫の鉄扇てっせんで叩かれ、頭に大きなたんこぶを作って気を失うのであった。


「……。おい、かぐや姫、やり過ぎじゃないの? あれはかなり痛いって!」

「あんたたちが前回オオカミたちにやったローションの方が童話的にはよほど問題よ!」


 性格的にドSなかぐや姫は悪びれることもなく、気絶しているオオカミ男にキビ団子を食べさせ、大人しくさせることに成功した。


「さて、次はいよいよ白雪姫のところだな!」


 こうしてオオカミ男を退治した桃太郎一行は白雪姫の元へと向かうのであった。

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