第2章 メデューサちゃんの呪いを解け編

第10話 鬼婆

 堺の港を目指す桃太郎一行。


 堺に向かう途中の山中で夜になってしまう。


「まずいな。このままでは野宿になってしまう。キジよ近くに民家がないか見てこい!」


 桃太郎に命じられたキジは近くに民家がないか探して回る。


「桃太郎さん、一軒ありましたよ!」

「よし! そこに泊めてもらおう」


 桃太郎一行は山の中にあった民家に一晩泊めてくれないかお願いする。

 民家には優しそうなお婆さんが一人で住んでいて快く泊めてくれることとなった。


 桃太郎一行は一部屋借りて、そこで雑魚寝することになった。


 しかし……


 夜中にトイレに起きたサルが囲炉裏の方が明るいと思って近づくと、お婆さんが鬼の姿になり、包丁を研いでいた。


「も、桃太郎さん、アイツ鬼婆ですよ……」


 そーっと桃太郎のところに戻るとかぐや姫は爆睡していたが、桃太郎は刀を肩にかけ壁に寄りかかり目を覚ましていた。


「ま、まさか気づいていたのですか?」

「まあな、あの寒がりのキジが外の止まり木で寝るとか言ってトンずらした時点で既に気づいていた!」


 桃太郎はそう言うと鬼婆が包丁を研いでいる囲炉裏の方に向かい、2,3発拳骨をする音が聞こえると、鬼婆の泣き声が家中に響き渡った。


「まさか鬼退治で有名な桃太郎一行とは知らずに襲おうとしてしまい申し訳ございません」

 

 鬼婆は頭に大きなたんこぶを作りながら、桃太郎に謝罪する。


「なぜ鬼婆などになった?」

 

 桃太郎が理由を尋ねると、鬼婆は元は人間であったが、口減らしのために息子夫婦に山に捨てられ、いつしか鬼になってしまったという。


 桃太郎は思うところもあったが、鬼婆に料理を作ってやり食べさせた。


「あなたを襲おうとしたのにこんなにしてもらっていいのですか?」

「ああ、泊めてくれたお礼だ気にするな。キビ団子も作ったから食べてくれ!」


 桃太郎はキビ団子も作ってやり、肩も揉んであげた。


「桃太郎って意外と優しいのよね」


 爆睡していたかぐや姫が桃太郎を見ながらいつもより優しい口調で呟いた。


「桃太郎の旦那はお婆ちゃん子でしたからね」

 

 犬がかぐや姫の隣で答える。


 桃太郎に優しくされた鬼婆はこの世に思い残すことはないと、翌朝、日光を浴びて消えると言う。


「俺は人間への戒めのためにもお婆さんがこの山に残っても良いと思うが」


 桃太郎は鬼婆に思いとどまるように説得したが、鬼婆の決意は固く、翌朝、鬼婆は日光に向かい合掌しながら消えて行った。


「も、桃太郎さん、優しいのですね」


 鬼婆に対する優しい態度を見て、メデューサはますます桃太郎が好きになるのであった。


 こうして鬼婆に一晩泊めてもらった桃太郎一行は再び堺の港を目指して歩き出すのであった。

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