第9話 再びトランシルバニアへ

 備前に戻った桃太郎一行。


「あ~暇だわ、サル君ちゃんと腰揉んで!」


 かぐや姫はサルに腰を揉ませ、キジには団扇で扇がせ、犬に至っては枕にするなど、怠惰の限りを尽くしていた。


「おい、かぐや姫、少しはちゃんとしろ! 女の子たちの憧れなんだろ!」

 桃太郎もかぐや姫を地上に引き戻したことを少し後悔していた。


「ねえ、どっか楽しい所連れて行ってよ!」

 かぐや姫は横向きに寝っ転がりながら、犬を枕に話しかけてくる。


「……。いや、少しは働けって、メデューサちゃんを少しは見習え! ねえ、メデューサちゃん!」


「……」


 桃太郎が庭で洗濯物を干していたメデューサに話しかけるが、メデューサは考え事でもしているように、桃太郎の声には反応しなかった。


「メデューサちゃんどうしたの?」

「あ、桃太郎さん、いえ、ちょっと考え事していて……」


 桃太郎はメデューサが心配になり、理由を聞いてみた。


「いえ、このまま呪いが解けなかったらどうしようかと思って……」

「でも、魔眼殺しの眼鏡をかけてれば人間の姿でいられるでしょ?」

「そうなんですが、それでは桃太郎さんが嫌かなと思って……」

 メデューサは少し恥ずかしそうに顔を赤らめながら、桃太郎から目をそらした。


 桃太郎はよく意味がわらないという表情でメデューサを眺めていたが、起き上がったかぐや姫が桃太郎に近づき持っていた扇子で桃太郎の頭を殴った。


「鈍感ね! 気づいてあげなさいよ!」

「いてぇな、かぐや姫、その扇子、鉄扇てっせんじゃねぇか! おまえ、それ完全に凶器だぞ!」

 桃太郎は頭に大きなたんこぶができ、枕から解放された犬が水で濡らした手拭いをたんこぶにあて冷やしてあげた。


「それにしても呪いか……。なにかよい方法はないものか?」

「桃太郎の旦那、トランシルバニアのアナ王女なら何か知っているかも知れませんよ!」

「あ、あのボインの……」

 桃太郎はボインで綺麗なお姉さんのアナ王女に会いたい気持ちもあり、乗り気になった。


「なになに海外、楽しそう! わたしも行くわ!」

 かぐや姫もノリノリである。


 こうしてメデューサを元の人間に戻すべく、桃太郎一行は再びトランシルバニアを目指すのであった。




 


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