第8話 かぐや姫
日本に帰ってしばらくすると、トランシルバニアのウィリアムからドラキュラ退治の報酬が届いた。
桃太郎一行はドラキュラ退治お疲れ様会と称し、京の都に旅に訪れていた。
桃太郎一行が宿屋を探して街をうろついていると、一人の公家が話しかけてきた。
「あの、鬼退治で有名な桃太郎さんでしょうか?」
「そうだけど、おたくは誰?」
公家の男に話を聞くと、男はかぐや姫に求婚し、さんざん貢いだが、かぐや姫は満月の今晩月に帰るというので、貢いだお宝を取り返してほしいとのことだった。
「かぐや姫か……。あいつワガママそうだし嫌だな……」
桃太郎は乗り気ではなかったが、あまりに元気のない公家の男が不憫になり、協力することにした。
「よし、では、サル、キジ、犬は仲間を集めてこい! メデューサちゃんは夜までにできるだけたくさんキビ団子を作って! 公家のあんたも家来の中から力自慢を一人でも多く集めてきて!」
こうして役割分担をすると、桃太郎はかぐや姫の屋敷へと向かった。
満月の夜……
「お爺様、お婆様、お世話になりました……」
月の使者が現れ、かぐや姫を乗せた船が浮上し、かぐや姫は今にも月に帰ろうとしていた。
「ちょっと待った!」
かぐや姫の屋敷に突如現れた桃太郎は、かぐや姫の船にロープを結わくと地上に向かって引き戻してきた。
「ちょっと桃太郎、何してるのよ! あんたは備前の田舎で大人しくしていなさいよ!」
「黙れかぐや姫! 何度か映画化したことあるからって調子に乗りやがって! 貢がせたお宝を置いていけ!」
桃太郎とかぐや姫が口汚く口論を始める。
「旦那、お待たせしやした!」
そこにサル、キジ、犬が仲間を連れて現れ、桃太郎に加勢する。
「桃太郎さん、私も力自慢の家来たちを連れてきました」
公家の男も力自慢の家来をたくさん引き連れ現れた。
「よし、ひくぞ!」
「オーエス! オーエス!」
桃太郎たちは全力でかぐや姫の船を引き戻す。
「か、かぐや姫! この者たちはなんですか?」
「う、うるさいわね。地球のカスどもなんて早く振り切りなさいよ!」
かぐや姫も必死のあまり、地の性格を隠さなくなっていた。
「桃太郎さん、キビ団子作ってきました!」
「ナイス、メデューサちゃん。みんなに配って!」
メデューサが用意した百人力のキビ団子を食べて、桃太郎たちはより力強く、かぐや姫の船を引っ張った。
「お前ら地球人の底力を見せてやれ!」
「オーエス! オーエス!」
そして遂にかぐや姫の船は徐々に地上に引き戻され始めた。
「ダメだ! これ以上はもたない! かぐや姫、来年の十五夜に迎えに来ますんで、もう一年、地球にいてください!」
月の使者はそう言うと、かぐや姫の船を切り離し、月へと帰ってしまった。
かぐや姫の乗っていた船は地上に落下し、かぐや姫は船に乗せていたお宝を公家の男に返すことになった。
そして公家の男たちにさんざん貢がせていたことがバレたかぐや姫はお爺さん、お婆さんの家にもいられなくなる。
「こうなったのは全部あんたのせいだからね、桃太郎! 来年の十五夜まであんたの家に客人として泊めてもらうから!」
こうして行き場を失ったかぐや姫は一年後の十五夜まで桃太郎の家に居候することになったそうな……。
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