第3話 これが私の選ぶ道

 気に入った見た目を手早く作れご満悦なルーリー。

続いて決めるのは初期ステータスの項目。

ぺんおんでのステータス項目は以下の通り。


HP 

0になったら死亡。

MP

魔力技を使うためのコスト。マジックポイント。

SP

物理技を使うためのコスト。スタミナポイント。


攻撃力

物理攻撃

魔力攻撃


防御力

物理防御

魔力防御


移動力

物理移動

魔力移動


適応力

物理適応

魔力適応



アーツスロット

コンバットアーツ

クラフト アーツ


RPアーツ


必殺アーツ


 HPから運まではクラス事の初期値が適応されるためプレイヤーが弄るポイントは無い。

アーツとは一般的なゲームでいうスキルや呪文の事。上限なしに覚えることが可能だが、戦闘中に使えるのはアーツスロットに登録したものだけ。コンバットは戦闘スキルでクラフトは生産スキル。


 RPロールプレイアーツとは世界から与えられたゲーム上の役割。

期待された役割をこなす毎に育っていく。

これによって得られる恩恵はステータスの上昇が主な物。


 仮にヒーローであることを求められたプレイヤーが悪党と戦うなら、その戦闘中ヒーローは通常よりも強くなる。

もちろん悪であることを求められるプレイヤーも存在する。

大前提として善悪どちらに寄るかはキャラクター制作時に選ぶことができる。なので嫌々どちらかをやらされるということは少ない。


 必殺技とはゲームの主人公であるプレイヤー一人一人に与えられたオリジナルのアーツ。

MPSPの両方を消費し自分で作った大技を放つことができる。




──────────────────────────────



「初期技の選択ね。戦闘技と生産で二個ずつ……クラス的に魔法系は壊滅だからそこだけ気をつけなきゃ」


 ドラゴノイド種はドラゴンでも龍でもなく人型の恐竜である。魔法なんてものは使えない。

武器を使う技、魔法を放つ技、身体を強化する技、体を武器とする技。

各カテゴリーに数十以上もあるそれらを大雑把に取捨選択していく。

チェック項目は消費するものと参照する部位。


「うーん悩む。ここで選べるなら割とすぐとれるんだろうけど……先に生産もみとくか」


 今ルーリーが悩んでいるのは、


【身体強化】

一時的に体を強くする

【腕術】

拳攻撃に補正がかかる

【蹴術】

蹴り攻撃に補正がかかる

【装甲化】

甲殻を隆起させ攻撃を防ぐ


といった物。ここまでは絞った。だが逆を言えばここからが特に難しい。

なので生産アーツに何かシナジーを得られそうなものが無いか、これだ! という決定打を探すことにした。


「料理、錬金、建築、鍛冶、農業漁業林業。うーん制作物に補正がかかる物ばっかりだ。猟師とか罠スキルくらいこっちにくれればいいのに全部戦闘スキルなのか……あっ! ダンスとかあるじゃん! ダンスはいうほどクラフト系なのか? でもありがたいな体動かせるスキルだ」


【ダンサー】カテゴリーにありルーリーが注目したスキルは下の四つ。


【オンステージ】

自身が注目状態にある場合ステータス上昇

【ブレイクダンス】

アクロバットな動きを補正する

【気分昂揚】

注目状態にある場合成功判定が上昇する

【可憐舞踏】

自身が注目状態にある場合味方の精神異常を解除


「だんだん見えてきたぞ。じゃあ組み合わせはこうしようか?」


コンバットアーツ


【蹴術】

蹴り攻撃に補正がかかる

【装甲化】

甲殻を隆起させ攻撃を防ぐ


クラフト アーツ

【ブレイクダンス】

アクロバットな動きを補正する

【気分昂揚】

注目状態にある場合成功判定が上昇する


「アースドラゴノイドとも合ってるんじゃないかな? イメージはカポエイラで! ……まあ名前と有名キャラしか知らないけど」


 ルーリーはスキルを試せる訓練場を呼び出す。

硬いコンクリートの地面と数体のカカシが立っているだけの空間だ。


「選んだスキルで任意発動は装甲だけ。他は常時発動だから意識する必要はない。っよし! やってみるか」


 両手をパンパンと数度打ち付け、ルーリーはカカシへと走り出す。

彼我の距離は十メートルほど。カカシまであと3メートルほどの所でルーリーは腕を伸ばし、思い切り前方に飛び込んだ。


 そして、前転の要領で地面に手を付け、そのままカカトをカカシへと落とす。

ゴンッ! 気持ちの良いヒット音が響く。カカシが消え、ルーリーの体が背中から地面へと落ちていく。

だが、キュピン! とスキルの補正音が鳴る。【ブレイクダンス】の効果で無理な動きの反動が消える。

地面につけたままの両手をひねり、手首を起点に体が回る。

ほぼ水平状態のルーリーの体がグルグルと回りスピードを上げていく。


高速で回る視界の中、ルーリーの視線は他のカカシを捉える。




 ゴンッ! ゴンッ!ゴゴンッ! 

器用に回転を維持したまま数メートル置きに配置されたそれら近づき連続して蹴りを放っていく。

最後に音が二重になったのは尻尾と足が連続でヒットしたせい。


「よっと」ある程度カカシをなぎ倒した後、ルーリーは回転の勢いのまま手を放しクルリと飛び上がって足から着地した。


「ぜんっぜん酔わない! すっごいこれ! ダメージはよくわかんないけどめっちゃ楽しい!」


 ルーリーは肩や腰を回しながら、元の空間へ戻る。

次に決めるのは順番通りにRPアーツだと考えていた。


「えぇ……ロールプレイって自分で選べないの? じゃあいいやえーっとあとは?」


 RPアーツはキャラ作成完了時に自動で振り分けられる。

その説明をみたルーリーは露骨に眉をしかめる。気を取り直し、次の項目を見るも再び嫌そうな顔になる。


「あー必殺かードラゴノイドの必殺って竜化一択じゃない? 今選べないならパスしたいくらいなんだけど」


 必殺アーツはぺんたす6にも有った。

再使用までの期間が長くたまにしか使えない大技。


 ドラゴノイドが使える必殺アーツ。

【竜化】

自身が一定時間恐竜状態になる。

【ブラスト】

属性の付いた砲弾を発射する。

【祖霊術】

恐竜の零体を召喚し攻撃してもらう。


 魔法に適性のないドラゴノイドでは霊術は使いこなせない。遠距離技のブラストは時々しか使えないのでは戦略に組み込みづらい。

なので自分を単純に強化してくれる竜化がベターだった。


 それなのにこのテスト版では必殺技の土台として選択できるのはブラストと祖霊術のみ。どちらもとても使いづらい。


 祖霊術で設定できる項目は呼び出す恐竜の見た目と攻撃手段と攻撃のエフェクト。

色々とこだわってカスタムすることが可能だ。

だが弱い。しかも再使用時間は一日で固定。


 ブラストは物理系遠距離に属するので威力を期待できる。

最大限まで威力を求めると再使用にリアルタイムで二日ほどかかる。


逆に再使用までの時間を短縮する方を目指すと最短で十分に一発の使用が可能。だが当然威力は減る。

必殺感は減るが、エフェクトも威力も抑え手軽な攻撃手段とした方がまだましか。


 選ぶ属性は風。範囲は狭く。距離も短く。発射部位は腕。

名前は【エアシュート】


「これでOK! さて始めますか!」

 設定画面をスクロールさせ、漏れがないかチェック。


空欄は設定不可のRPアーツのみ。


『設定を完了しますか?』の問いに【はい】を選択。

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