68 火の道

風吹くと主を探す夏帽子


面影はやがて消え去る鰯雲


私だけの部屋に露草植えにけり


恋猫や時限装置の几帳面


落命の音一文字の誘蛾灯


かたつむり何を思いてその角度


先生は白髪になりて卒業す


書きあぐねインク垂らして梅雨きたる


霊木にかどわかされし処女の耳


木洩れ日にどれもが白き夏帽子


楽園は人なきところ春紫苑はるじおん


戦闘機水鉄砲で撃墜す


草刈りし我を虐殺者と思う


散水や虹を作って終わりけり


あめんぼう日輪あらば一息に


敗将の叫喚積乱雲瓦解


火の道を蜉蝣のまま行きにけり


溝泥どぶどろの廃油人たる者のおり


アイス食う時どんな子も集中す

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