67 紫陽花

夏空やあくまで動いている酸素


口だけとなりて燕の子の朝食あさげ


さすらいを身に負うて居る赤とんぼ


小善やアゲハに道を譲りけり


美身なる女神に一点ある汗疹あせも


少年のうなじ遥かに合歓の花


人体を搾りきりける夏日かな


生と死の狭間で重き梅雨ばいうかな


永遠を知らぬ幸あり青蛙


雲の上より蝶舞い降りて凪の星


煉獄は人の数あるジギタリス


梅雨空や何を書いても拒まれて


紫陽花や胸の奥なる豪雨かな


梅雨空のぼんやりとして爪を切る


黒き眼は不敵の色ぞ青蛙


青蛙見つめる先の浄土かな


茅花つばな流す風には親も子もなくて


夏空に入れたくて泣く鬼の刺青しせい


紫陽花の雨に打たれて濃き夕べ


紫陽花や不惑なんて言葉だけよ


紫陽花やもの憂き日々の色を綴じ


梅雨空が落ちてくるまで眺めてる


いつかまた歩み出す日よかたつむり

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