64 ねこじゃらし

人類の滅びてのちの夏の草


何咲いてゐるかと見上げえごの花


竹煮草廃車をずんと突き抜けり


五月雨やけふも殺めぬまま終わる


夏空やさびしき時は紅く見え


地平線に触れてみたくて孤児になる


が置きし林檎深夜の車窓かな


深窓のねやから満員電車へと


匙の上に大陸の破片アイス食ふ


五月雨が駆ける新幹線の窓


五月雨を追ひかけてゆく母子かな


片隅だけが人生でなし母子草


ふと彼の汗よみがへる車窓かな


夏は海どんどん遠ざかる爆音


心中の報聞き琵琶の実を噛る


驟雨過ぎ道に暗号めく小枝


孤独なる毒を飲みけりねこじゃらし


十薬どくだみのいま真っ盛り通行人


十薬どくだみや吐くほどの愛知らぬまま

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