63 永遠の永遠

心臓に投網して啼く月夜かな


見えぬ眼は宇宙のごとし緑夜りょくやの子


広告の募集広告マトリョシカ


五月雨に一夜のあざの痕消えず


あるじなき最初の年の紫蘭かな


少年のその右胸に鳩を射よ


子の笑ふ声のみ遠し夏野原


マロニエや場末の広き帽子店


錆びてゐる薔薇も月日も心奥も


時の影うつして夏の水深し


夏浅し飛行機雲のきれいな日


愛のあとすべて雷雨に打たれたし


五月雨やなかなか変わらない信号


五月雨や信号赤のまま暮れる


五月雨の遮断機つひに苔蒸して


五月雨を喰ひ破りつつ警報器


闇を敵にも友にもせずに螢飛ぶ


梅雨の子のさちの数だけ水溜まり


(草間彌生頌)

永遠の永遠にたんぽぽいっぱい

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