61 氷水

昭和平成令和柳はゆれるかな


この身に億の言葉があつて初時雨


五月雨を傾聴すれば咀嚼音


夏暮れて遠吠え裸女の峠より


月の夜に鐘の音して月の嗤ひ


深更の貸金庫なる羽虫かな


乱射してこの白薔薇に紅与えん


ボマルツォのデモンに高き夏の草


髙の字の梯子を昇ってみたい夏


蝶々を見上げるわたし、ずっと人。


スリッパはハの字のままで夏暮れる


はまなすや地球の息吹は潮騒です


シャーペンの塗料消えてく夏休み


昇天をドンと知らせる花火かな


青空や昨夜花火を飽食す


心臓は散らずはまなすha.raと散る


路上にて誰も触れない猫じゃらし


三色菫の前でしゃがんでいる夕べ


航跡を大きく散らし空は夏


豪快に匙をアイスに刺したい日


死んでゆくひとの眼のいろ氷水

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