60 其処

物憂しや鼻毛は刈らぬ方がいい


向日葵で受け止めきれぬ鉄パイプ


あの人の名残りで首を絞める名人


向日葵の虐殺されし二千本


ガーベラも死ぬ時やはり地を舐める


薔薇の香を引き国境を作りたし


夏が滴り落ちてくる青き天


ガーベラや心臓取り出したくて


アカシアの咲く時此処もまた大連


誰の形見かいま満開の水中花


吾妹子の肉少年の汗のなか


横領後指なき彼と花魁草


まじなへばしとねに百合の香が充ちる


其処に娼婦の鉗子かんしがあつて五月五日


汗滲みてしばらく座つて居る娼婦


ロオトレツクの恋したをんな五月晴れ


暑ければ車体でつくる目玉焼き


妄執を一色となす虹の橋


百合の花散るときあはれなる娼婦

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