55 クレッシェンドデクレッシェンド

遠い日の夕べに沈みゆく鈴蘭


白エリカ人の形に風はし


窓辺にはさちあり荒野からの東風こち


たんぽぽの道ゆくランドセルの列


(エミリー・ブロンテ)

地のたまとなりてヒースを揺らしをり


菜の花に触れず口笛過ぎゆけり


鈴蘭や人なき夜は白き海


鈴蘭や人なき夜の白き海


口笛を教えし人は影法師


遠い日の散歩のよすが花水木


人といふ花あり咲かぬものもあり


おだまきや秘事の重さに立ち尽くす


クレッシェンドデクレッシェンド白雨かな


行く春の夜に傾聴すタイヤ音


汗の日が増へて暦が動ゐてる


初夏となりいよゝ黒きアスファルト


夏めくや「いつか、きっと」を追ひしひと

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る