23 大寒

病葉わくらばの骨さへ溶けぬ青深空みそら


忘却の凍死抱けり春の山


何を追う予定まみれのカレンダー


大方は白き日々なり新手帳


梅のしべ刈らぬ鼻毛や一笑す


師も友も金もなき身は枯木かな


枯木なり空をぶすぶす刺している


人なれば切れぬ糸あり餅伸びる


父殺す時を得ぬまま父となる


梅一輪見上げる先の空の青


梅が香の続く道なり低頭す


我が道の他に道なし小夜さよ時雨


句にりて遊ぶたまあり寒雀


太陽を垂直にけ福寿草


蝋梅や救ひなき身のかり浄土


(卒業を主題に短歌をひとつ)

寂寥は門出ののちの師の背中戻る者なき三年一組


大寒や櫛の先なるなが白髪


青空や飛行機雲と梅ひとつ


(知人の父は戦時中フィリピンに従軍していた。ある時突然、戦友の死を悼むため巡礼の旅に出た。最後のやり残した仕事を片付けるかのように。帰国して程なく亡くなった。)

水泡の友に手向けん仏桑花ぶっそうげ

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