22 廃駅

奥付おくづけ古し開戦まであと三ヶ月


馴染みなき国の近さよ長戦ながいくさ


ヒトラーのちょび髭ほどの草を抜く


ひまわりや取り残されしビルヂング


左義長さぎちょうや振り落とす遺骸彼はジル・ド・レ


先の世とのちの世散りぬ山桜


沈丁花ひらく程よき朝となる


ひとひらのあきつの重さ澪標みおつくし


コーヒーはいつもコーヒー色してる


積年の賀状の灰や遠鴉とおがらす


終わりなき空にたじろぐ梅ひとつ


廃駅に停まる音あり枯葎かれむぐら


望みなき夢のなかにも春の風


白梅や雪の重みに下を向く


(須藤康花やすか美術館)

寒の空いのち削りし画家のこと


リリパット国を照らしぬ待雪草まつゆきそう


その散華さんげ涙のごとし白木蓮

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