21 無季むき

(季語かと思えばそうでなく、そうでないと思えば季語だったり、何の資格があるのか少数の権威者が勝手に決めていることで、全く無視しさっても良さそうなものだが、ここには季語の入っていないと思われる句のみ置いた。アリバイ的にありふれた季語を挿入するより気が楽である。玄人好みの季語を駆使して「俳人らしい俳句」になるのは嫌だ。)


(『嵐が丘』作者を想ふ)

エミリーは風の荒野を愛してた


メレンゲで作る可食のデスマスク


古人大兄皇子佳ふるひとのおおえのおうじよき名なり


天空の波紋濁さず飛行機雲


いずれ航跡こうせき失せぬ瞼の日本海


「へんしたいのよこうえんしゅう」寝そべる子


何の木やよくよく見れば信号機


落書きもいのちなりけりゆるり消す


我といふ他所人よそびとめり生骸いきむくろ


地にあらば空を恋ふのみ痩鴉やせがらす


風渡る荒野の水子眠らせて


待ち針をこけしに刺してむなしい日


暗鬱の雲が治める雨の街


溶け残るスティックコーヒー雨少し


鼻糞でいつかシュヴァルの理想宮


いだくすでに乳房の二つあり


一人老いる娘の乳房電車来る


マラソンや全ての我の汗飛べる


やんちゃ坊主穴に落下し南米へ


暁の暴動なれど澄める水


秒針の疾風はやてとなりて4時のなぎ


独り身を会津八一あいづやいちの目の細さ

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