19 独り身

限られし才と言えどもうたは出づ


銀皿に苺ひしめく月あかり


たこあがる少年の日を繋ぎ留め


地球儀を回せ回せど我ら不動


青空も一張羅いっちょうらなり門出の日


独り身の背中の痩せや煉瓦へき


紙の家霧の厚みにえず瓦解


冬の蒲団干すなり線路沿いの家


散乱す庭に凍れる残り水


銃口のすみれにキスを国境兵


口笛も曲がりて過ぎぬ山颪やまおろし


冬の空たちまち割れて闇の予感


冬空や海にはありしはてはて


断言といふ愚かさや梅ひらく


僧院に打ち棄てられし菊人形


の河に消えゆくだけの雪もある

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