14 海のいろ

仮の世の野末のずえの墓地で笛を吹く


赤き実のごとき不安を手のうち


根府川ねぶかわや鉄橋の赤空の青


アロエ咲く海はせねど人は


潮騒や果てなき過去を語りかけ


(こんな一日を過ごしてみたい)

海のひだ数へてけふも日が暮れる


一月や歩けそうなり今朝の波


絹一反きぬいったん転がすごとく波きた


真澄ますみとは空の下なる海のいろ


航跡はビロードにばさみ


ふね沖へやがて光の波となる


残菊や好きな言葉は無関心


ダイナマイト抱へて乗り込む成人式


成人や五人絡みの焼け木杭ぼっくい、


(万物の根源は水と唱えた賢人タレスは、空を見ながら考えを巡らしているうち足元の穴に躓いて近くにいた少女に笑われた。自分の足元も不確かな人に何の真理がわかるものかと。梅が開花し始めるこの時期、木ばかり眺めていて思わぬ怪我をしないように)

探梅やタレス笑ひし一少女

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