12 火事

寄るなみはひとつの声で呼びかける


むしる遠くの村の火事の報


火事見れば心の泉れ果てる


火事知らす児女じじょの頬にも火が移る


火事なれば筆を取り来て爪を塗る


隣家まで火事は迫れど家にいる


火の手とはよくも言いしか指千本


みずという名の男ありはだか


我の骨ひて笑へる美男かな


我の頬なぞる美男の指のかさ


閑日やらんに源氏の吐息かな


掌上しょうじょうの菌の虐殺消毒液


(渡辺京二死去)

面影は浄土のはす女人にょにんへと


君が死んだら祝電送るとわらふ友


ぽちゃぽちゃの指で蟻んこつぶす子よ


敵意とは花のち残るとげのこと

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