8 磔刑その他

ペン先を束ね沈丁花のつぼみ


日暦ひごよみの日々は一途に痩せる日々


冬なれば何かが部屋にうずくまる


初氷その下父がてている


連翹れんぎょうは消え失せかねた流れ星


晩餐会説明のなき肉料理


いま食べた肉は誰ぞと問う子爵


椿落つ不可視のギロチン労働す


絞首台ロープにみる夜露かな


月天心つきてんしん首もロープも蒼白に


     (磔刑)


磔刑たっけいや乳首に薔薇を刺し通す


磔刑の朝に飲み干す海豚いるかの血


血も汗も流るるままよ磔刑図


磔刑の肉に触れなんマリアの舌


磔刑のうめきと覚ゆ山颪やまおろし


磔刑後誰か近づき這いのぼる


(聖セバスティアヌス殉教図)

め肉がいよいよしきセバスティアン



碧空へきくうに墨を塗りたい時もあり


月なき夜堤防を踏む人誰ぞ


月なき夜重油となりて海眠る


残夢ざんむよし壁に生えくる首を蹴る


我がたま呼吸いきする音は虎落笛もがりぶえ


寄るべなき雲が果てなき空のなか


一月の堤防に寄す波と骨

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